熱可塑性樹脂の射出成形機の修理作業中に火傷
業種 | その他の製造業 | |||||
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事業場規模 | 1000人以上 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 射出成形機 | |||||
災害の種類(事故の型) | 高温・低温の物との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.101129
発生状況
この災害は、樹脂製機械部品製造事業場で、熱可塑性樹脂の射出成型機を修理する作業中に発生したものである。 災害発生当日、パラホルムアルデヒド系の熱可塑性樹脂を射出成形し、機械部品を製造する工程で、射出成形機の射出不良が発生したため、職長Aおよび作業者B〜Eの計5人が射出成形機の修理作業を行っていた。 この射出不良は、射出成形機の内部で樹脂の一部が過熱されて炭化し詰まったことが原因であると推測し、5人は、原料樹脂を投入するホッパーを取り外し、ホッパー取り付け座面部分で炭化・固着していた樹脂を取り除いた。 その後、射出状態を確認するため、ホッパーを取り外したまま、内部に一定量の樹脂を充填して、射出成形機の操作盤の射出成型作業を開始するスイッチを入れた。 その際、樹脂の融点165℃に対し通常は190℃に設定するところを、当日は射出状態の調子をみるため200℃まで昇温させて稼動させたところ、溶融した樹脂および樹脂の一部が熱分解して生成したガス状物質がホッパー取り付け座面穴から噴出し、座面穴をのぞき込んでいたAおよびAの傍らにいたB、Cの3人がこれを浴びて火傷を負った。3人は、直ちに病院に搬送され、Aはそのまま入院した。 災害発生後、射出成形機を分解したところ、ホッパー取り付け座面部分だけでなく、さらに奥の加熱筒内部でも樹脂が炭化・固着し、射出機構の一部が破損していたことが判明した。そのため、射出成形機の内部で溶融した樹脂が出口を失ってホッパー取り付け座面穴に逆流したものであった。 Aは災害発生時、保護眼鏡を使用していたが、保護面等は使用していなかった。また、BおよびCは、保護眼鏡、保護面等の保護具をいずれも使用していなかった。 また、災害が発生した射出成形機について、通常の操作に関する作業手順書は作成されていたが、修理作業等の非定常作業に関する作業手順書は作成されていなかった。 さらに、修理作業に当たったA〜Eの5人は、通常、射出成形機を使用した機械部品の製造を行っており、工場では、5人に対し安全衛生教育をしていたものの、射出成形機の構造や予想される不具合の内容とその対応については十分教育していなかった。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 作業手順書が作成されていなかったため、修理作業が適正に行われなかったこと 射出成形機の射出不良は、ホッパー取り付け座面部分だけでなく、さらに奥にある加熱筒内部にも炭化・固着した樹脂があったことが原因であったが、これらすべてを取り除かないまま射出成形操作をしたために、圧縮された溶融樹脂および樹脂が熱分解して生成したガス状物質がホッパー取り付け座面穴方向に逆流して開口部から噴出した。 射出成形機の通常の操作に関する作業手順書は作成されていたが、修理作業等の非定常作業に関する作業手順書が作成されていなかったため、適正な修理作業が行われなかった。 |
2 | 保護具を使用していなかったこと 作業者のうち、Aが保護眼鏡を使用していただけで、BおよびCは保護眼鏡、保護面等の保護具を使用していなかった。 |
3 | 十分な安全衛生教育を実施していなかったこと 射出成形機の構造、危険部分、取扱方法、不具合の原因およびその対応等に関して、作業者に対し、十分な安全衛生教育が実施されていなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 非定常作業についての作業手順を作成すること 射出成形機の修理、清掃、調整等の非定常作業について、これらの作業における危険有害性を特定・評価し、それぞれに対応した適切な対策を盛り込んだ作業手順書を作成して、関係作業者に周知徹底する。 |
2 | 適切な保護具を着用させること 射出成形機の修理、清掃、調整等の非定常作業においては、関係作業者が高温の溶融樹脂および樹脂が一部熱分解したガス状物質を浴びるおそれがあるので、適切な保護眼鏡、保護面等の保護具を使用させる。 |
3 | 作業者に対し十分な安全衛生教育を実施すること 作業に伴う危険有害性とその対策について、作業者に対し、あらかじめ十分な安全衛生教育を実施する。 |