メタノールが貯蔵されていた廃ドラム缶の切断作業中に爆発
業種 | 産業廃棄物処理業 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 引火性の物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.101128
発生状況
この災害は、事業場内の廃ドラム缶置き場にあったドラム缶をグラインダーで切断しているときに発生したものである。 作業者Aは、電子機器を製造する工場で廃棄物焼却施設の運転管理を担当しており、通常の業務は、焼却炉内でダイオキシン類等の有害物が発生しないように廃棄物焼却炉の焼却温度を800℃に維持管理することであった。 災害発生当日、焼却炉の温度が所定の温度で安定したことから、Aは廃ドラム缶を半分に切断して廃棄物容器を作ることにした。Aは、廃ドラム缶置き場から、廃ドラム缶1個を自分の作業場所に運んできて、可搬式電動グラインダーを用いて半分に切断しようとしたところ、ドラム缶が爆発して発生した炎により火傷を負った。 このドラム缶には以前メタノールが貯蔵されていて、内部には少量のメタノールが残留しており、これが蒸発してドラム缶内に滞留していた。このドラム缶を可搬式グラインダーで切断したため、発生した火花が着火源となって爆発したものである。 この事業場では、廃ドラム缶を切断して事業場内で廃棄物を入れて置くための容器を作成する指示をAら作業者にしていなかったが、Aは、それまでも何度か同様の切断作業を行って廃棄物容器を製作していた。しかし、事業場ではAに対し廃棄物容器の製作について、その是非も含め明確な作業指示を行っていなかった。 また、事業場では、ドラム缶の廃棄に関する規程を定めておらず、廃ドラム缶置場の管理者も指名していなかった。 さらに、事業場では、安全衛生委員会等で爆発や火災のおそれがある危険な作業について調査を行ったことはなく、爆発や火災の防止対策について検討したこともなかった。 |
原因
この爆発災害の直接の原因は、メタノールが残留していた廃ドラム缶を作業者が可搬式グラインダーで切断したため、発生した火花が着火源となって発生したものであるが、このような状況を引き起こした間接的な原因として、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 廃ドラム缶の切断作業について、作業を禁止することも含め作業指示を明確に行わなかったこと Aは、たびたび廃ドラム缶を切断し、廃棄物容器を製作していたが、事業場ではこの作業を禁止することも含め作業指示を明確にしていなかった。 |
2 | ドラム缶の廃棄に関する規程を定めていなかったこと 事業場では、ドラム缶の廃棄に関する規程を定めていなかったため、危険有害物が残留するドラム缶が廃棄されていた。また、廃ドラム缶置場の管理者を指名していなかった。このため、危険有害物を含む廃ドラム缶の再利用が黙認されていた。 |
3 | 爆発や火災のおそれがある危険な作業について調査を行ったことはなく、また爆発や火災の防止対策について検討していなかったこと |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 廃ドラム缶の切断作業について、作業者に明確に指示すること 廃ドラム缶の切断作業について、禁止するか否かを十分に検討し、作業者全員に徹底する。 作業者に廃ドラム缶の切断作業を行わせる場合は、メタノール等の危険有害物を以前貯蔵していた廃ドラム缶については、内部を完全に洗浄した後でなければ、溶接、溶断、切断等、火気を伴ったり火花を発生したりする作業を行ってはならないこととし、その旨を事業場の規程として文書化するとともに作業者に徹底する。 |
2 | ドラム缶の廃棄に関する規程を定めて文書化すること 使用済みの廃ドラム缶については、そこに貯蔵されていた原材料の危険性または有害性に応じた適切な方法によって完全に洗浄した上で、廃ドラム缶置場に出すことを定めて文書化し、作業者全員に徹底する。 また、廃ドラム缶置場の管理者を指名し、廃棄されたドラム缶の数や貯蔵されていた内容物、廃棄した部署等を把握することも必要である。 |
3 | 安全衛生委員会等で爆発や火災のおそれがある危険な作業について調査を行い、災害防止対策を定めるとともに、労働者に周知すること |