丸太皮むき機の歯車部へ注油作業中に巻きこまれて死亡
業種 | 製材業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の木材加工用機械 | |||||
災害の種類(事故の型) | はさまれ、巻き込まれ | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | 無意識行動 | |||||
発生要因(管理) | 不意の危険に対する措置の不履行 |
No.101118
発生状況
この災害は、製材工場において丸太皮むき機へ注油する作業中に発生したものである。 災害発生当日、皮むき機の操作担当の作業者Aは、職長から杉丸太の皮むき作業を行うよう指示された。当日、工場内では7人が作業を行っていたが、Aは1人で屋外に設置されている皮むき機による作業に取り掛かった。 Aが作業を開始して約1時間後、フォークリフトで屋外から工場内へ杉丸太の移動作業を行っていた作業者Bが、Aへの連絡事項を伝えるため探していたところ、Aが皮むき機の動力伝達用の歯車に巻き込まれているのを発見した。Aはすぐ病院に搬送されたが、死亡した。 皮むき機には、丸太を送るための動力を伝達する歯車が全部で16個あり、ラインに沿って1列に並んでいるが、Aが巻き込まれていたのは左側から4個目の歯車であり、左端の3個の歯車にはグリスが注油されていた。Aの足下には、グリス容器とグリスを注油するために使うへらが落ちており、Aは皮むき機を動かしながら歯車にグリスを注油していたところ、歯車に触れて巻き込まれたものであった。 Aがグリスを注油していた歯車は、カバー等の覆いがなく、むき出しの状態で回転していた。また、歯車の近辺には、作業者が危険を感じたときにむき機を停止させるための非常停止スイッチは設けられていなかった。 工場では、皮むき機の歯車に注油する作業について作業手順書を作成しておらず、また、注油する際には皮むき機を停止するルールもなかった。そのため、Aは普段から水圧式皮むき機を動かしたまま注油を行っていた。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 皮むき機の安全措置が不十分だったこと 皮むき機の安全措置が十分でなかったために、注油作業中にAは回転している歯車に触れて巻き込まれた。不十分だった安全措置は、具体的に次のとおりである。 [1] 16個の歯車にカバー等の覆いがなく、むき出しのままであった。 [2] 歯車への注油作業を行う場所から操作できる位置に非常停止スイッチがなかった。 [3] 巻き込まれ危険についての警告表示がなかった。 |
2 | 安全に注油作業を行うための作業手順書が作成されていなかったこと 水圧式皮むき機の歯車への注油作業について作業手順書がなく、また、機械を停止して行うことが工場のルールになっていなかったため、回転中の歯車に注油して巻き込まれた。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 機械の本質的安全化等の安全措置を講じること 歯車への注油作業等についてリスクアセスメントを実施し、次のような本質的安全化等の安全措置を講じる。 [1] 歯車へのグリス注油は、安全な位置に設置するグリスポットと各歯車へのグリス供給用配管で構成する遠隔注油装置で行う。 [2] 巻き込まれ等の危険のある個所に覆い等を設置するとともに、ガードを設置し、停止時のみガードが開けられるように可動式ガードと運転停止のインターロックを行う。 [3] 付加的保護方策として、操作しやすい位置に非常停止装置を設置する。 [4] 巻き込まれ危険について、作業者に分りやすい場所に警告表示を行う。 |
2 | 歯車へのグリス注油作業等の作業手順書を作成し作業者に周知徹底すること 巻き込まれのおそれがある歯車等への注油作業については、機械の停止、停止の確認、非常停止装置の機能確認等を盛り込んだ安全な作業のための手順書を作成し、関係作業者に周知徹底する。 |