鋼製パイプをエアーグラインダーで切断中、といしが破裂して負傷
業種 | 一般機械器具製造業 | |||||
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事業場規模 | 16〜29人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 研削盤、バフ盤 | |||||
災害の種類(事故の型) | 飛来、落下 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 組立、工作の欠陥 | |||||
発生要因(人) | 無意識行動 | |||||
発生要因(管理) | 不意の危険に対する措置の不履行 |
No.101117
発生状況
この災害は、鋼製パイプを可搬式グラインダーで切断する作業中に発生したものである。 災害発生当日、作業者Aは、数百本の鋼製パイプ(長さ10cm、直径7cm、厚さ1.8mm)を切断するため、可搬式グラインダーの試運転を約1分間行った上で、高さ90cmの作業台に固定したパイプの切断作業を開始した。 作業を開始して約2時間後、パイプの切断途中でといし(外径10cm、厚さ2mm)がパイプの切断面に挟まったので、Aはグラインダーの動力を切り、といしの停止を確認した後、といしを切断面から抜き取り、といしにヒビ、割れ等の外観上の異常がないことを目視で確認した。 さらに、Aはグラインダーを無負荷の状態で回転させて異常がないことを確認した後、パイプの切断時にグラインダーの覆いがパイプに接触するのを避けるため、覆いの側板のない方を自分の方へ向けた状態で作業を行おうとした。 この状態で再びといしを切断面に接触させたとき、といしが破裂して破片が顔面に向かって飛来し、使用していたプラスチック製の保護面を破損した。Aは、保護面の破片で負傷した。 グラインダーの回転数と切断といしの最高使用周速度は適切であり、といし覆いも研削盤構造規格に適合していた。切断面にといしがはさまった際、といしの側面に負荷が加わり、といしに小さな亀裂が生じていたため、無負荷状態での回転では破裂しなかったものの、パイプに接触した衝撃でといしが破裂したものである。この日、Aは災害発生時までに、摩耗により3枚のといしの取替えを行っていたほか、切断中にといしが切断面にはさまるトラブルが7〜8回発生していた。 また、Aは、上下長袖作業服を着用し、保護面、防じんマスクおよび保護手袋を使用していた。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | といしがパイプの切断面にはさまって生じた亀裂によりといしが破裂し、飛散したこと 切断中のパイプにといしがはさまった際、といしの側面に負荷が加わって、といしに微小な亀裂が発生し、再びといしを回転し切断面に接触させたことで亀裂が成長し、といしが破裂した。 さらに、切断中の可搬式グラインダーの向きが不適切であったため、といし覆いの側板部のない方が作業者に向いており、破裂したといしの破片が顔面方向に飛散した。 |
2 | 保護面の強度が不足しており、飛散したといしの破片で破損したこと Aは保護面を使用していたため、破裂したといしの破片の直撃を避けることはできたものの、破損した保護面により負傷した。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | といしの破裂によるけがをなくすため、切断機を用いてパイプの切断を行うこと 可搬式グラインダーの作業では、切断中にといしに側面からの負荷などが加わることが多く、といしに亀裂が生じて破裂に至る危険性をなくすことができないので、可搬式グラインダーに替えて切断機を使用してパイプの切断を行うようにする。また、切断機は、加工物に対して機械的に支持された切断方向のみ可能な切断といしの送り機構とする。 なお、切断機の使用は、安全性に加えて、直径の大きなといしを使用することにより、といし取替え頻度が少なくなり作業性が大きくなる効果も期待できる。 |
2 | 強度の高い保護面を使用させること 飛来したといし破片からの保護を確実にするため、より衝撃強度の高い材質の保護面を作業者に使用させる。 |