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労働災害事例

ブレーカで岩石の小割作業中、土砂崩壊に巻き込まれ死亡

ブレーカで岩石の小割作業中、土砂崩壊に巻き込まれ死亡
業種 採石業
事業場規模 16〜29人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 地山、岩石
災害の種類(事故の型) 崩壊、倒壊
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:0人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物) 法面の欠陥
発生要因(人) 危険感覚
発生要因(管理) 危険場所に近づく

No.101112

発生状況

 この災害は、岩石採取場において、建設機械のブレーカを運転して岩石の小割作業を行っているときに発生したものである。
 この岩石採取場では、砂岩層の岩盤を発破で砕いた岩石を事業場内のクラッシャーで破砕、選別して砕石を製造している。岩石採取場は、8段の階段状のベンチから成り、事業場が作成した採石作業計画では1段の高さは約10m、勾配は75度であった。
 災害発生当日の朝、現場責任者、作業指揮者、作業者4人の合計6人が出勤し、作業指揮者が当日の作業指示を行った後、採石作業にとりかかった。
 作業者Aは、作業者Bとともに、1番下のベンチでの作業に就き、Aはブレーカで岩石の小割作業を、Bはドラグ・ショベルでダンプトラックへ岩石の積込み作業を担当した。
 午後の作業を始めて約1時間たったとき、突然、岩石採取場の上部層のベンチで大規模な土砂崩壊が発生し、下部層のベンチで作業していたAがブレーカごと土砂に飲み込まれて死亡した。Aと同じベンチで作業していたBは、ドラグ・ショベルが土砂で流されたものの無事であった。
 土砂崩壊が起きた岩盤には、無数の亀裂があり、前日から当日の早朝まで降った60mmを超える雨により、かなりの水分が岩盤にしみ込んでいた。これに加え、当日の昼前に、発破作業を行っており、土砂崩壊が起こりやすい状態となっていた。この事業場では、地山の崩壊、土石の飛来等による危険を防止するために行う作業開始前、大雨の後および発破作業を行った後の作業個所および周辺地山の点検を実施していなかった。
 また、この事業場では、5人の社員に採石のための掘削作業主任者の技能講習を受講させていたが、同作業主任者の選任は行っていなかった。さらに、作業者に対して地山の土砂崩壊の危険性等についての安全衛生教育を実施していなかった。

原因

 この災害の直接的な原因は、60mmを超える降雨が岩盤へ浸透したことに加え、発破による影響により、土砂崩壊が発生したことであるが、土砂崩壊を引き起こした間接的な原因として、次のようなことが考えられる。
1  岩石採取場のベンチの勾配を75度としていたこと
 作業を行っていた岩石採取場の岩盤には、無数の亀裂があり、ベンチの高さが10mであったにもかかわらず、ベンチの勾配を労働安全衛生規則で定める60度以下としていなかった。
2  採石のための掘削作業主任者を選任していなかったこと
 事業場では、複数の社員に採石のための掘削作業主任者の技能講習を受講させていたが、同作業主任者を選任していなかった。
3  地山の崩壊、土石の飛来等による危険を防止するための点検を行っていなかったこと
 事業場では、作業開始前、大雨の後および発破作業を行った後に、地山の崩壊、土石の飛来等による危険を防止するための、作業個所および周辺地山の点検を行っていなかった。
4  作業者に対し、地山の土砂崩壊の危険性についての安全衛生教育を行っていなかったこと

対策

 同種災害防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1  岩盤に亀裂がある岩石採取場では勾配を60度以下とすること
 岩盤に崩壊または落下の原因となる亀裂があり、高さが5mを超える岩石採取場では、勾配を60度以下にしなければならない。
2  採石のための掘削作業主任者を選任すること
 採石作業の実施に当たっては、採石のための掘削作業主任者技能講習修了者の中から採石のための掘削作業主任者を選任し、次の事項を行わせなければならない。
[1] 作業の方法を決定し、作業を直接指揮すること
[2] 材料の欠点の有無ならびに器具および工具を点検し、不良品を取り除くこと
[3] 安全帯等および保護帽の使用状況を監視すること
[4] 退避の方法を、あらかじめ指示すること
3  地山の崩壊、土石の飛来等による危険を防止するための点検を行うこと
 地山の崩壊、土石の飛来等による危険を防止するため、点検者を指名して、作業開始前、大雨の後および発破作業を行った後に作業個所および周辺地山の点検を行わなければならない。
4  作業者に対し、安全衛生教育を行うこと
 作業者に対し、地山の土砂崩壊の危険性等について安全衛生教育を実施しなければならない。