焼却炉のテスト中、爆発が起き、作業者が火傷を負い死亡
業種 | 機械(精密機械を除く)器具製造業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 引火性の物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 高温・低温の物との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 不意の危険に対する措置の不履行 |
No.101098
発生状況
この災害は、工場の屋外に設置した注文品の焼却炉で顧客が持ち込んだ廃棄物、廃液に火をつけたところ、爆発し、作業者が火傷を負って死亡したものである。 災害発生当日、作業者AとBは、廃棄物用の焼却炉を発注した顧客事業場の従業員Cとともに、Cが用意した塗料カス、ウエス、セルロイド製フィルム等の焼却対象廃棄物のサンプルを焼却炉に投入し、さらに、新聞紙をまるめて焼却炉に投入し、そこにCが用意したエマルジョン廃液をかけた。その後、Aが新聞紙に火をつけて焼却炉の中に投げ入れたところ、突然、爆発が起きてA、BおよびCの3人が火傷を負い、そのうち投入口の前にいたAが死亡したものである。 Cが用意したエマルジョン廃液にはトルエンが含まれており、焼却炉内の廃棄物および新聞紙にエマルジョン廃液をかけたことでトルエンが気化し、火をつけた新聞紙を投入したことにより、トルエンに引火し、爆発が起きたものである。 災害が発生した工場では、法人向けの廃棄物焼却炉を作成販売しており、それぞれの顧客事業場における廃棄物に適した焼却炉を製作するために、あらかじめ顧客に燃焼対象となる廃棄物のサンプルを提供してもらい、燃焼テストを行っていたが、提供されたサンプルの成分は確認していなかった。 また、工場では、焼却テストを実施する際の手順や安全確認を盛り込んだ作業手順書を作成していなかった。さらに、作業者に対する安全衛生教育を実施していなかったため、作業者が可燃物や引火性の液体を燃焼させたときの危険性について認識していなかった。 |
原因
この災害の原因として、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 顧客が用意した廃棄物のサンプルの成分を確認しないまま焼却テストを行ったこと 廃棄物のサンプルは、塗料カス、ウエス、セルロイド製の可燃物であり、エマルジョン溶液にはトルエンが含まれていたが、事前にこれら成分の確認をせず、安全面での検討を行わずに燃焼テストを行った。 |
2 | 焼却テストの作業手順書を作成していなかったこと 工場では、顧客が提供した廃棄物のサンプルの成分確認等を盛り込んだ焼却テストの作業手順書を作成していなかった。 |
3 | 作業者に対する安全衛生教育を実施していなかったこと 工場は、作業者に対して化学物質の爆発等の危険性に関する教育を行っていなかったため、作業者が焼却物による爆発の危険性について正しく認識していなかった。 |
対策
同種災害を防止するためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 顧客が用意した廃棄物のサンプルの成分を事前に確認すること 焼却テストに用いる廃棄物のサンプルは、事前にその成分の確認を行うほか、少量のサンプルによる燃焼テスト等を事前に行い安全であることを確認すること。特に、可燃性ガスを発生させる可能性のあるものが含まれている場合は、顧客から得た情報を基に、事前の安全面での検討を十分に行うことが重要である。 |
2 | 安全面に配慮した作業手順書を作成し、作業者に周知すること 工場で行っている作業については、安全面に配慮した作業手順書を作成し、その内容を関係作業者に周知する。 |
3 | 爆発の危険性等に関する安全衛生教育を実施すること 関係作業者に対し、化学物質の爆発等の危険性、安全な作業方法等に関する教育を実施し、爆発の危険性を認識させた上で作業を行わせる。 これは、顧客事業場についても同様で、気化した有機溶剤に火をつけるなどという危険な作業を行わないよう教育を徹底する必要がある。 |