トンネル工事現場において、ダンプトラックが燃える
業種 | トンネル建設工事業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | トラック | |||||
災害の種類(事故の型) | 火災 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | トンネル建設工事 | ||||
災害の種類 | その他の爆発・火災等 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 整備不良 | |||||
発生要因(人) | その他の職場的原因 | |||||
発生要因(管理) | 機械、装置、工具、用具等の選択を誤まる |
No.101097
発生状況
この災害は、トンネル工事現場において、坑内に駐車していたダンプトラックから出火、炎上し、避難中の作業者が煙を吸い込んだものである。 災害発生当日、この工事現場では監督者を含め7名の作業者がおり、坑口から約800m奥の切羽部での作業と履工作業、残土処理作業等を行っていた。 作業を始めて3時間後、切羽部での作業とダンプトラックによる掘削残土の抗外への搬出作業が終了した。その日はダンプトラックの使用予定がないので、運転手は坑口から約600m入った坑内に駐車し、キーを抜いて、ダンプトラックを離れた。その30分後、ダンプトラックのエンジンルームから炎と煙が上がっているのを付近にいた作業者が発見した。坑内にいた作業者は、備え付けられていた消火器による初期消火を行ったが、火が消えなかったので、坑外へ避難した。このとき、徒歩で避難中の作業者5人が煙を吸い込み、近くの病院で手当てを受けた。 その後、到着した消防署により消火活動が行われ、鎮火した。なお、煙を吸い込んだ5人以外、人的な被害はなかった。 火が出たダンプトラックは、エンジンルーム内の排気管が外れており、排気ガスの熱でエンジンルーム内にたまっていたすすやほこりが発火したものであった。このダンプトラックは、工事現場内のみを走行し、公道を走行するための車検は受けていなかったが、トラックの所有者は公道を走行する車両と同様の定期検査を半年ごとに行っていた。また、作業開始前の日常点検は毎日行われていたものの、点検項目はブレーキ、前照灯、方向指示器等であり、エンジンルーム内の点検を行われていなかった。 このトンネル工事現場では、坑内に消火器のほか、空気呼吸器が備え付けられていたが、作業者は空気呼吸器の使用方法を知らなかった。また、坑内で火災が発生したことを想定した消火訓練や避難訓練は実施されていなかった。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | ダンプトラックの点検を適切に実施していなかったため、排気管が外れていたこと ダンプトラックについては、毎朝、作業開始前の日常点検を実施していたが、エンジンルームの中は点検していなかった。そのため、エンジンルーム内で排気管が外れていることに気づかず、たまったすすやほこりが発火し、火災が発生した。 |
2 | 長時間使用しないダンプトラックを坑内に駐車したこと 当日中の使用予定がないダンプトラックを坑内に駐車したため、火災発生時に煙が坑内に充満し、作業者5人が被災した。 |
3 | 消火訓練や避難訓練を行っていなかったこと 坑内での火災を想定した消火訓練や避難訓練を行っていなかったため、初期消火や避難の際に作業者は備え付けられていた空気呼吸器を使用することができず、被害が拡大した。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | ダンプトラック等について作業開始前等の点検や修理を適切に行うこと 坑内で使用するダンプトラック等、内燃機関を有する機械については、火災の発生が重篤な事態を引き起こすことから、エンジンルーム内も含めて点検を行うようにする。また、走行中に音、振動等の異常を感じた場合には、直ちに坑外に移動し、原因を突き止め、必要な修理を行うことも重要である。 |
2 | 坑外の安全な場所にダンプトラック等の駐車場所を設けること 坑内で使用するダンプトラックであっても、坑外に駐車場所を設け、長時間使用しない場合は坑外に停めることが重要である。 |
3 | 坑内で発生した火災等を想定した消火訓練や避難訓練を実施すること 坑内で火災等の異常が発生したときの措置をよく検討し、その措置を作業者に周知徹底するため消火訓練や避難訓練を実施する。特に、坑内に備え付けられた消火器や空気呼吸器については、訓練を通じてその使用方法を周知させることが重要である。 |