クレオソート油の貯蔵タンクの開放検査の準備中に、貯蔵タンクが爆発
業種 | 無機・有機化学工業製品製造業 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の危険物、有害物等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
被害者数 |
|
|||||
発生要因(物) | 有害物のガス、蒸気、粉じん | |||||
発生要因(人) | 省略行為 | |||||
発生要因(管理) | 確認しないで次の動作をする |
No.101094
発生状況
この災害は、クレオソート油が貯蔵されているタンクの開放検査の準備中に、貯蔵タンクが爆発したものである。 Z社は、印刷用インク、塗料、樹脂の着色剤等の原料として使用されるカーボンブラックの製造を行っており、原料のクレオソート油を貯蔵しているタンクを一時開放して検査することになった。 クレオソート油の貯蔵タンクは、直径13.5m、高さ7.6mの円筒形で最大貯蔵量は950kLであり、貯蔵タンクの開放検査の準備作業として、準備作業を請け負ったY社により、災害発生前日までに貯蔵タンク内のクレオソート油が抜き取られ、当日はY社の作業者が貯蔵タンクに接続されている配管の取り外しと閉止板の取り付け、攪拌機の撤去を行った。 夕方、予定していた準備作業がすべて終わり、後片付けの状況をZ社の担当者が確認してY社の作業者が立ち去り、その後1時間が経過したとき、貯蔵タンクが爆発した。直ちに消防車が駆けつけ、消火活動が行われた。爆発当時、当該貯蔵タンクでは作業が行われておらず、周辺にも作業者がいなかったため、人的な被害はなかった。 爆発が発生した貯蔵タンクの内部には、完全には抜き取れなかったクレオソート油が20kL程度残っていた。また、当該貯蔵タンクは、4年前までタール等を貯蔵していたもので、貯蔵タンクの底部にはその当時からのスラッジが堆積していた。このスラッジは鉄および硫黄を主な成分とし、ナフタレン(C10H8)、フェノール(C6H6O)、インデン(C9H8)等の有機物質が多量に染み込んでいた。これらのスラッジは、15年前に貯蔵タンクの使用が開始されて以降、除去されたことはなかった。 貯蔵タンクの開放検査の準備に伴い貯蔵されていたクレオソート油が抜き取られたため、それまでクレオソート油に沈んでいたスラッジが空気と接触するようになり、主成分の鉄が空気中の酸素と反応して発熱し、有機物質や貯蔵タンクに残っていたクレオソート油が発火、爆発したものであった。 今回の貯蔵タンクの開放検査の準備作業の実施に当たり、Z社の担当者とY社の担当者が連携して作業計画を作成したが、事前に、貯蔵タンク底部にあるスラッジの堆積の有無と量、成分等の確認はしていなかった。 |
原因
この事故の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 貯蔵タンク内に堆積していた鉄を含むスラッジが発熱し、有機物質やクレオソート油が発火したこと 当該貯蔵タンクの底部には、以前、タール等の貯蔵タンクとして使用されていたときに生成したスラッジが堆積していた。このスラッジは鉄および硫黄を主成分とするほか、引火性の強いインデン等の有機物質が染み込んでいた。開放検査の準備でクレオソート油を抜き取ったため、それまでクレオソート油に沈んでいたスラッジが空気に触れるようになり、鉄が酸素と反応して発熱し、残存していた有機物やクレオソート油に引火した。 |
2 | 事前にスラッジの有無や量、成分の確認をせずに作業計画を作成したこと 貯蔵タンクを所有するZ社および開放検査の準備作業を請け負ったY社が連携して作業計画書を作成していたが、事前に貯蔵タンク内部のスラッジの有無や量、成分の確認をしていなかったため、スラッジの発熱による火災・爆発を予想することができず、また、その防止策を作業計画書に盛り込むことができなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | タンク内の状況を確認して作業計画を作成すること 貯蔵タンクの開放検査およびその準備作業を行う場合には、貯蔵タンクの所有者と作業を請け負った業者が協力して、事前に貯蔵タンク内の貯蔵物質の性状、スラッジの堆積の有無と量、スラッジの成分等を調査したうえで、安全な作業のための計画を作成する。 |
2 | 貯蔵タンク内のスラッジの発熱を防止する措置を講じること タンク内の貯蔵物を除去した後もスラッジが堆積していて、空気との接触により発熱するのおそれがあるときには、次のような措置を講じて貯蔵タンク内でのスラッジの発熱や発火を防止する。 [1] 貯蔵タンク内のスラッジを完全に除去する。 [2] タンク内の貯蔵物を少量戻し、スラッジと空気との接触を遮断する。 [3] 水の散布等によりスラッジが発火温度に達しないよう温度管理を行う。 なお、貯蔵タンクは、どのような物質を貯蔵したか、その貯蔵経歴を記録し保存しておくとともに、貯蔵物質を変更したときには、その都度、タンク内のスラッジを除去することも重要である。 |