発酵タンクの修理中、アーク溶接の火花がタンク内の可燃性ガス、引火性の物の蒸気に引火、爆発
業種 | その他の金属製品製造業 | |||||
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事業場規模 | 100〜299人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 可燃性のガス | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 換気の欠陥 | |||||
発生要因(人) | 無意識行動 | |||||
発生要因(管理) | 不意の危険に対する措置の不履行 |
No.101080
発生状況
この災害は、発酵タンクに生じた亀裂の修理作業中に発生したものである。 ミルクローリーや第一種圧力容器等のタンクを製造しているZ社では、乳製品を製造しているY社から、以前に納入した牛乳を発酵させるタンク(容積1,200L)の亀裂、腐食等の確認と修理を依頼された。 災害発生当日は、Z社の作業者AとBの2名がY社に赴いて、作業手順書に従ってまずAがタンク内に入り、浸透探傷試験を行った。その結果、亀裂が発見されたので、その亀裂個所をアーク溶接により修復することになった。 修復作業は、引き続きAがタンク内にいてアーク溶接を行い、Bはタンクの開口部にいてAへの機材の受け渡しを行うことにした。準備が整い、Aがアーク溶接を開始したとき、タンク内で爆発が起こり、A、Bともに火傷を負った。 アーク溶接の前にタンク内で行った浸透探傷試験では、浸透剤および現像液の塗布にスプレーを用いていたが、このスプレーの液剤には通知対象物となっているエタノールやヘプタンが含有していたほか、充填ガスとしてプロパン、ブタンが使用されていた。そのため、浸透剤および現像液の塗布により、これら引火性の物の蒸気や可燃性ガスがタンク内に拡散し充満していた。その後、アーク溶接を行ったため、溶接火花がタンク内の引火性の物の蒸気や可燃性ガスに引火爆発したものである。AとBは、作業を行うための機材として、送風機もY社に持ち込んでおり、浸透探傷試験の前には換気を行ったが、浸透探傷試験中やアーク溶接の前にはタンク内の換気を行っていなかった。 Z社では、タンクの修理作業を[1]前作業、[2]浸透探傷試験、[3]アーク溶接による修復、[4]後作業の順番で行うことを作業手順書で定めており、[1]の作業ではタンク内の換気を行うこととしていたが、[2]や[3]の作業でタンク内の換気を行うことは作業手順書に盛り込まれていなかった。 また、Z社は、浸透探傷試験に使用するスプレーの成分やその危険性、有害性について、作業者に教育をしていなかった。そのため、AおよびBは、スプレーに引火性の物および可燃性ガスが含まれていることの認識がなかった。 |
原因
この災害の原因としては、次のことが考えられる。 | |
1 | 浸透探傷試験で使用したスプレーに含まれていた引火性の物の蒸気や可燃性のガスがタンク内に充満した状態でアーク溶接を行ったこと 浸透探傷試験で浸透剤や現像液の塗布の際に使用したスプレーには液剤としてエタノールやヘプタンが、充填ガスとしてプロパンやブタンが含まれており、これを噴射したことで引火性の物の蒸気や可燃性ガスがタンク内に充満し爆発雰囲気が形成されていた。その後、タンク内の換気をしないままアーク溶接を開始したことで、溶接火花により引火、爆発した。 |
2 | 作業手順書の内容が適切でなかったこと Z社が作成したタンクの修復作業の作業手順書では、作業者がタンク内に入る前の前作業の段階で換気を行うことは定められていたが、引火性の物の蒸気や可燃性ガスが拡散する浸透探傷試験中やアーク溶接の前にタンク内の換気を行うことは定められていなかった。 |
3 | 安全衛生教育が不十分だったこと 浸透探傷試験に使用するスプレーの成分やその危険有害性について、作業者に教育をしていなかったため、作業者はスプレーに引火性の物や可燃性ガスが含まれていると認識がなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | アーク溶接を行う前にタンク内の十分な換気を行うこと タンク内で引火性の物や可燃性ガスを含有する物を使用した後火気を使用する場合には、火災や爆発を防止するため、通風、換気等の実施を関係作業者に明確に指示し、十分な通風、換気等を行わせる必要がある。 |
2 | 適切な内容の作業手順書を整備すること 狭いタンク内での修理等の作業を行う場合には、可燃性ガス等による火災爆発のほか、酸素欠乏危険や作業者の急性中毒、アーク溶接に伴う感電も想定されるので、これらの危険有害性を解消し、安全に作業するための方策を検討して、作業手順書に明記する。 さらに、作業の手順や安全に作業するためのポイントを、あらかじめ作業者に十分周知させることも重要である。 |
3 | 安全衛生教育を徹底すること 危険有害性がある化学物質を取り扱う作業については、あらかじめその危険有害性と危害防止のための措置について、作業者に対し安全衛生教育を実施したうえで作業に従事させる必要がある。 |