医薬品中間体の製造中に、水素化ナトリウムが発火してトルエン蒸気に引火し、火傷
業種 | 無機・有機化学工業製品製造業 | |||||
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事業場規模 | 100〜299人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 引火性の物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 火災 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | 無意識行動 | |||||
発生要因(管理) | 組合せては危険なものを混ぜる |
No.101079
発生状況
この災害は、医薬品の製造工場で、第2種有機溶剤であるトルエンから医薬品中間体を製造する工程で発生したものである。 この工程は、[1]Na塩化、[2]縮合反応、[3]水洗、[4]トルエン溜去の4つの作業で構成され、作業者Aは、同僚と2人でこの4つの作業を担当しているが、そのうち[1]と[4]をAが担当しており、災害は[1]で発生した。 災害発生当日、Aは、始業前の体操および朝礼を終えたのち[1]の作業に取りかかった。まず、無水トルエンの入ったナトリウム化反応槽に水素化ナトリウム(NaH)を投入するため、ドラム缶からNaHの袋を取り出して計量を行い、反応槽の攪拌を開始するとともに窒素の注入と昇温を開始した。その後、Aは、反応槽の投入口を全開にし、NaHの袋を抱えながら反応槽の中にNaHの投入を始めた。 投入作業を始めて30分ほどで2袋目の投入を終えたが、Aは、作業場が暑いので作業服の上着を脱ぎ、Tシャツ姿となって3袋目の投入を始めたところ、ナトリウム化反応槽の投入口付近で火災が生じ、火傷を負った。その後、Aは、シャワーで火傷部分を冷やし病院に移送されてが、II度の火傷と診断された。 ナトリウム化反応槽にトルエンが投入されてから災害発生まで約1時間経過しており、その間、攪拌と昇温が行われたため、反応槽の内部にはトルエンの蒸気が充満していた。そこにAが投入したNaHは、禁水性の危険物であるが、Aの顔や腕から流れ落ちた汗と反応してNaHが発火し、これが引火源となっての投入口付近トルエンの蒸気が引火したものである。 工場では、ナトリウム化反応槽へのNaH投入作業の作業手順書を作成していたが、NaHが禁水性の危険物であることやその取り扱い時の留意事項を盛り込んでいなかった。また、NaHのMSDSを製造メーカーから取り寄せておらず、関係作業者に対し、NaHやトルエンの危険性や有害性について教育していなかった。 なお、[1]の工程の作業は、Aが一人で行っていたもので、危険物の取り扱いに関する作業指揮者は指名されていなかった。 |
原因
この災害の原因としては、次のことが考えられる。 | |
1 | NaHのナトリウム化反応槽への投入方法が適切でなかったため、作業者の汗によりNaHが発火し、反応槽の投入口付近のトルエン蒸気に引火したこと この作業では、原材料として禁水性のNaHや引火性のトルエンを取り扱っていたにもかかわらず、作業者の汗がNaHにかかるような作業方法を採用していた。このため、NaHが作業者の汗で発火し、反応槽の投入付近のトルエン蒸気に引火した。 |
2 | 作業手順書が適切でなかったこと 原材料として禁水性危険物のNaHや引火性の強いトルエンが使用されていたが、作業手順書にはこれらの取扱い上の注意事項等についての記載がなかった。 |
3 | 工場の安全衛生管理が不十分だったこと 工場では、NaHのMSDSを製造メーカーから取り寄せておらず、また、危険物の取り扱いに係る作業指揮者を選任していなかった。さらに、関係作業者に対し、NaHやトルエンの危険性や有害性について教育していなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | ナトリウム化反応槽へのNaHの投入方法を改善すること 反応槽へ引火性および有害性の強いトルエンを投入している場合には、その蒸気が引火爆発する危険や作業者が吸入して中毒になるおそれがあるので、通風・換気等の措置を講ずる。 また、水素化ナトリウムは、水と強く反応し発火するので、作業者の汗がかからないような投入方法を検討し、採用することが必要である。 |
2 | 作業手順書を整備すること 危険有害性がある化学物質を取り扱う作業では、危険物の性状、作業者の汗等の水と接触するおそれのない取り扱い方法を盛り込んだ作業手順書を整備し、その内容を関係作業者に周知徹底する。 |
3 | 安全衛生管理を徹底すること (1)MSDSの入手 工場内で取り扱う化学物質については、その危険性や有 害性を明記されたMSDSを製造メーカーから取り寄せ、その 内容を関係作業者に周知させるとともに設備や作業方法の 改善に役立てる。 (2)安全衛生教育の実施 危険有害性がある化学物質を取り扱う作業者に対しては、 あらかじめその危険有害性と危害防止のための措置につい て、安全衛生教育を実施したうえで作業に従事させる必要 がある。 (3)作業指揮者等の選任 危険物を製造しまたは取り扱う作業を行う場合には、作業 指揮者を選任し、適切な管理を行わせる必要がある。また、 作業者の中で技能講習を修了した者を有機溶剤作業主任 者として選任し、必要な職務を行わせることも必要である。 |