集合住宅の室内改装工事で、接着剤に含まれていた有機溶剤の蒸気に引火し、爆発
業種 | 建築設備工事業 | |||||
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事業場規模 | 16〜29人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 引火性の物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 火災 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | その他の建築工事 | ||||
災害の種類 | 事務所・宿舎等の火災 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 有害物のガス、蒸気、粉じん | |||||
発生要因(人) | 無意識行動 | |||||
発生要因(管理) | 危険場所に近づく |
No.101077
発生状況
この災害は、集合住宅の室内改装工事において、接着材に含まれていた有機溶剤の蒸気に引火爆発し、労働者3人が休業災害を負ったものである。 Z社は、集合住宅の室内改装工事のうち、壁下地材設置工事とクロス貼り付け工事を二次下請として受注した。災害発生当日は、Z社の作業者3人により、壁下地材設置工事のうち結露防止用ボードの貼り付け作業が予定されており、午前中は結露防止用ボードの位置決めと切断、午後は接着剤の塗布と乾燥および結露防止用ボードの貼り付けが行われることになっていた。 作業は予定通り進み、午後3時半頃、すべての壁面への接着剤の塗布が完了した。接着剤の乾燥を待つ間、午前中の作業で傷をつけた台所床面の補修を行うことになり、作業者の一人が補修用パテを軟らかくするために加熱しようとして、ライターに火をつけたところ、突然爆破して火災となり、作業者3名が火傷を負った。 壁に塗布した接着剤には、溶剤として第2種有機溶剤であるn-ヘキサンが65〜75%含まれており、乾燥中に室内に充満した蒸気にライターの火が引火し、爆発したものであった。当日は、気温が低く、玄関を除きすべての窓を締め切った状態で作業を行っており、換気も行っていなかった。 Z社では、有機溶剤を含有する接着剤を使用する作業の実施に当たり、換気の実施、火気の取り扱い等の火災、爆発および中毒の防止のための対策を盛り込んだ作業計画を作成しておらず、また、有機溶剤作業主任者も選任していなかった。 災害発生当日の作業者は3人とも、普段は木工作業を行っており、接着剤を使用する仕事は1〜2回程度しか行った経験がなく、有機溶剤の危険有害性についての知識がなかった。また、Z社では改装工事に従事させる作業者に対し、有機溶剤を含有する接着剤の安全な取扱い等を含む安全衛生教育を実施していなかった。 |
原因
この災害の原因としては、次のことが考えられる。 | |
1 | 有機溶剤の蒸気が充満した室内でライターの火をつけたこと 作業者が有機溶剤の危険性を認識していなかったため、有機溶剤の蒸気が充満した室内で、ライターの火をつけたため爆発した。 |
2 | 作業計画を作成せずに作業を進めたこと Z社では、有機溶剤を含有する接着剤を使用する作業の実施に当たり、火災、爆発および中毒の危険に配慮した作業計画を作成していなかった。また、有機溶剤作業主任者も選任されず、作業者任せで作業が行われていた。 |
3 | 安全衛生教育を実施していなかったこと Z社では作業者に対し、有機溶剤を含有する接着剤の安全な取扱い等を含む安全衛生教育を実施していなかった。そのため、接着剤の取り扱い経験が少ない作業者は、有機溶剤の危険有害性についての知識がなく、危険な行為を行った。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 屋内で有機溶剤を含有する物を取り扱う場合は、十分な換気を行うとともに、火気は使用しないこと 特に、室内で接着剤等を使用する場合には、含まれる有機溶剤の量と危険有害性を事前に調査し、水溶性のもの等できるだけ危険有害成分の少ない接着剤を使用するようにすることが重要である。 やむを得ず有機溶剤を含有する物を使用する場合は、窓を開放する等により十分な換気を行うとともに作業者には火気禁止を徹底すること。 |
2 | 作業計画を作成し、作業者に周知徹底すること 事前に、作業内容や取り扱う材料等について、危険有害性を検討した上で安全な作業を行うための作業計画を作成するとともに、これを作業者に周知徹底する。 |
3 | 安全衛生管理を実施すること 接着剤に含有されている有機溶剤は、爆発の危険があるほか、人体に有害なものであり、有機溶剤の性状と危険性・有害性、換気の実施、引火源となる火気の排除、防毒マスク等個人用保護具の使用、等について関係作業者に十分な安全衛生教育を実施する。 また、作業者の中で、技能講習を修了した者を有機溶剤作業主任者として選任し、必要な職務を行わせることも必要である。 |