製鉄所のウインチの操作盤の配線作業中に感電し死亡
業種 | 機械器具設置工事業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の電気設備 | |||||
災害の種類(事故の型) | 感電 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 機械器具設置工事 | ||||
災害の種類 | 電気工事作業 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 充電部分の防護なし、不十分 | |||||
発生要因(人) | 無意識行動 | |||||
発生要因(管理) | 不意の危険に対する措置の不履行 |
No.101074
発生状況
この災害は、製鉄所の熱延工場において、ウインチ等の操作盤内の配線作業中に発生したものである。 災害発生当日の朝、製鉄所内の電気工事を請け負っているZ社の作業者A〜Eの5名は、製鉄所から熱延工場の結束機の防熱板の昇降ウインチの交換作業の発注を受けたY社の現場責任者Fから、製鉄所がY社に交付した工事指示書によりウインチ交換作業の指示を受け、さらに、口頭で付帯する配線の追加作業の指示を受けた。 作業分担は、D〜Fの3名がウインチの交換作業を行い、A〜Cの3名が配線のための配管用の溝を床に作ることになり、それぞれが直ちに作業に取りかかった。午前11時頃にウインチの交換が終了したので、D〜Fの3名は、Aらが行うコンクリート床の「はつり」作業に加わった。昼の休憩を挟んで作業が続けられ、午後2時頃には「はつり」作業が終了したので、6名で操作盤への配線の挿入を行うことになった。作業は、EとFが操作盤を床に固定している脚の内側に配線用のパイプを挿入し、続いて下からパイプに新たな配線を挿入した。 このとき、Aは、B〜Dの3名とともに操作盤のパネルを開けてパイプから配線が出てくるか否かを確認していたが、操作盤内を停電せずに行っていたため、操作盤内の端子で露出している充電部にAが接触し感電した。Aは、その後病院に移送されたが死亡した。Aらは、通常時と同じ作業服と軍手で作業を行っており、感電防止のための絶縁用ゴム手袋等の保護具は使用していなかった。 熱延工場の結束機の防熱板の昇降ウインチの操作盤の配線作業は、以前から計画されていたが、操作盤の電源を切ると他の生産設備が稼動できなくなるので、製鉄所では、当日は電源を切らずにウインチの交換のみ行う旨、工事指示書をY社に交付したが、指示書を受け取ったY社のBはウインチの交換に付帯する操作盤への配線作業も行うと勘違いした。製鉄所からY社への指示は、工事指示書の交付のみであった。Bは、配線作業については、作業内容をよく把握しないまま口頭で指示し、作業を行った。 |
原因
この災害の原因としては、次のことが考えられる。 | |
1 | 工事指示書の内容確認が不十分であったこと 当日は、元々停電作業によりウインチの交換と付帯する操作盤の配線作業が予定されていたが、工事指示書の内容はウインチの交換のみであった。発注者から元請のY社への指示は書面の交付のみであり、両者による工事指示書の内容確認は行われなかった。そのため、Y社のFは、付帯する操作盤の配線作業も行うものと勘違いして、作業を始めた。 |
2 | 感電防止措置が講じられていなかったこと。 Bが作業内容をよく把握しておらず、通電状態の操作盤の内部での作業があるにもかかわらず、充電部分への絶縁用防護具の装着、絶縁用保護具の使用等、感電防止のための措置を事前に講じることなく、作業を行った。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 発注者から指示された工事の内容をよく確認すること 工事指示書等の書面で指示される工事は、予定されていたものと違っていることがあるので、その内容をよく確認する。不明の箇所があれば発注者に問い合わせるようにし、発注者と元請の間で誤解がないようにして作業を行うことが重要である。 |
2 | 充電部分に接近して作業を行う場合は、感電防止措置を講じること 充電部分に接近して作業を行う場合は、電源を切った状態で行うことが原則であるが、やむを得ず通電状態のまま工事を行わざるを得ない場合は、充電部分に接触して感電する危険を防止するため、露出している充電部分への絶縁用防護具の装着、絶縁用保護具の使用等の感電防止措置を講じて作業を行う。 |