天井クレーンのガーダを移動式クレーンでつり上げ中、玉掛け用ワイヤロープが破断し落下したガーダの下敷きとなり死亡
業種 | セメント・同製品製造業 | |||||
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事業場規模 | 16〜29人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 移動式クレーン | |||||
災害の種類(事故の型) | 飛来、落下 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 不適当な工具、用具の使用 | |||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) | つり荷に触れ、下に入り又は近づく |
No.101071
発生状況
この災害は、ヒューム管製造工場において小型移動式クレーン(つり上げ荷重4.93t)を用いて、脱輪した天井クレーン(長さ17.3m、重さ4.3t)の車輪を復元するため、ガーダをつり上げそれを回転させる作業を行っていた際に発生したものである。 災害発生当日、脱輪した天井クレーンの復旧作業は、作業を依頼された鉄骨加工会社の社長Aが移動式クレーンの運転、同工場の作業依頼者Bがガーダへの玉掛け、被災者となった作業者Cが補助作業を担当し、3人で行った。 まず、ガーダの中央部に直径10mmで長さが異なる玉掛け用ワイヤロープ2本で2本4点掛けをし、フック側は半掛けで玉掛けをしてガーダをつり上げた。天井クレーンの脱輪状態を復帰させるためBはガーダを手で押しCは介添えロープを引いてガーダを回転させようとしていたところ、ホイストを固定していなかったため、ガーダ中央に停止していたホイストが滑り出し、レールストッパーに激突、その衝撃でガーダをつっていた玉掛け用ワイヤロープ2本が中央部で破断し、ガーダが落下して、ガーダの下で介添えロープを持ってつり荷の回転作業を手伝っていたCが落下したガーダの下敷きとなり被災した。 作業を行った3名は小型移動式クレーン運転技能講習および玉掛け技能講習の資格を取得していなかった。また、玉掛け作業に使用する用具の作業開始前点検についても実施をおこたっていた。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 強度の足りない玉掛け用ワイヤロープを使用し、しかも長さの異なる2本のワイヤロープを選定したこと |
2 | 移動式クレーンによる作業において、被災者がつり荷の下の危険な場所に立ち入ったこと |
3 | 法定の資格がない者に移動式クレーンの玉掛け作業を行わせたこと |
4 | クレーン作業で、使用する玉掛け用具について作業開始前点検を実施していなかったこと。 | 5 | 玉掛け作業を行うに当たって、使用する玉掛け用具の作業開始前点検を実施していなかったこと。 | 6 | 天井クレーンのホイストが滑動しないように固定していなかったこと。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 玉掛け用ワイヤロープを選定する場合は、その切断荷重・長さ等を十分検討し、安全係数は6以上とすること |
2 | 移動式クレーンによる作業を行うに当たっては、つり荷の下およびその周辺に作業者を立ち入らせないこと |
3 | 小型移動式クレーンの運転や玉掛け作業を行う場合は、それぞれの業務に必要な技能講習を修了した者に行わせること |
4 | クレーン作業で、使用する玉掛け用具については、作業開始前点検を的確に実施すること |
5 | 天井クレーンでの修理作業を行う場合には、ホイストが滑動しないようにロープ等で固定しておくこと |
6 | 移動式クレーンを用いて作業を行うときは、作業手順、労働者の配置等について作業計画を定めてそれに従って作業を行わせること |