トラッククレーンで貨物船からつり荷を荷下しする作業中、作業者がつり荷と船体側壁にはさまれ死亡
業種 | 港湾荷役業 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 移動式クレーン | |||||
災害の種類(事故の型) | はさまれ、巻き込まれ | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 作業手順の誤り | |||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) | つり荷に触れ、下に入り又は近づく |
No.101070
発生状況
この災害は、トラッククレーン(つり上げ荷重50t)を用いて貨物船の船倉からつり荷(直径13mm、長さ9mの鉄筋300本の束、質量13.4t)を荷下しする作業において発生したものである。 災害発生当日、当該事業場では11名(合図者であるデッキマン1名、被災者を含む船内玉掛け作業者4名、陸上玉掛け作業者2名、敷き材係4名)がグループを組み、トラッククレーンを使用して、早朝入港した貨物船から各種の建設資材を荷下ししていた。午後2時頃、同グループはつり荷を荷下しするため、つりビームを用いワイヤーの2本4点半掛けで鉄筋の束に玉掛けし、地切りをしたところ、つり荷の一方の端が1mほど上がり、もう一方の端が船体側壁に接触して地切りしていない状態となったため、合図者は玉掛け者の地切り確認の合図を待たずに、運転士に巻上げ操作の停止と別の玉掛け作業者に人力でつり荷を回転させるよう指示した。このため、船体側壁につり荷の端が接触した状態のまま、つり荷を地切り状態にもどすため、人力でつり荷を回転させたところ、つり荷が約45度回転した時に接触部から外れ、つり荷が急に回転し、船倉の壁近くにいた玉掛け作業者の1人に激突し、玉掛け作業者はつり荷と船倉側壁の間にはさまれ被災した。なお、合図者、玉掛け作業者およびクレーンの運転手の間で作業前の事前打合わせはなく、作業標準書も作成されておらず、関係労働者に対する安全衛生教育も十分ではなかった。 |
原因
この災害の原因としては次のようなことが考えられる。 | |
1 | つり荷が完全に地切りしていない状態にあり、かつ、つり荷の一方の端が船体側壁と接触した状態でつり荷を回転させたため、つり荷の接触部が外れた際につり荷が同じ方向に急に回転したこと |
2 | 合図者が玉掛け作業者からの地切り確認の合図を待たずに、運転士に巻上げ停止を指示し、接触状態のまま別の玉掛け作業者につり荷を回転させる作業を指示したこと |
3 | 玉掛け作業者、合図者及びクレーン運転士の作業前の打ち合わせが行われていなかったこと |
4 | 今回のような災害についての対応策の作業標準化がされていなかったこと また、安全作業についての教育が徹底していなかった。 |
対策
同種災害防止のためには次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 地切り作業中につり荷の一部が船体の側壁に接触したような場合、直ちに巻上げを停止し、玉掛けをやり直すなど、適切な処置を施すこと |
2 | 合図者は、地切りが適切になされたかどうかは、玉掛け作業者による確認の合図を待って判断すること |
3 | 同じ作業に関係する玉掛け作業者、合図者及びクレーン運転士の作業前の打ち合わせを綿密に実施すること |
4 | クレーンを使用した作業では、つり荷が船体の側壁に接触するようなことが想定されることから、これらについて予め対応策を検討し作業標準書を作成しておくこと |
5 | 玉掛け作業者に安全な作業方法について再教育を実施すること |