天井クレーンを使用してつり荷(鋼製角パイプ材)を移動中、つり治具のピンが抜け、つり荷が落下して作業者が下敷きとなり死亡
業種 | めっき業 | |||||
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事業場規模 | 16〜29人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | クレーン | |||||
災害の種類(事故の型) | 飛来、落下 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 不適当な工具、用具の使用 | |||||
発生要因(人) | 近道反応 | |||||
発生要因(管理) | つり荷に触れ、下に入り又は近づく |
No.101067
発生状況
この災害は、亜鉛メッキ工場内でつり荷の鋼製角パイプ材(25cm角、長さ3m、約625kg)を2台の天井クレーン(2台ともつり上げ荷重1.5t)を用い3点つりで移動させる作業中に発生したものである。 災害発生当日の午後、作業指揮者である被災者A、クレーン運転士B及び玉掛け作業者Cの3人は、メッキ前処理を終えた鋼製角パイプ材を、2台の遠隔操作式天井クレーンを使用し、専用のつり治具を用いた3点つりで、セット場と呼ばれるメッキ場所に移動させる作業を行っていた。ところがA は10本目の角パイプ材を移動中、酸による前処理の水きりが十分だったか気になり、クレーン運転士に指示して一旦クレーンを停止させ、角パイプ材を極端に斜めつり状態にして水切りを再確認していたところ、つり治具のU字形金具が変形して、高くつっている側の治具のピンが抜け、つり荷が落下し、荷の下方にいた作業指揮者である被災者Aが下敷きとなって被災した。 |
原因
この災害の原因としては次のようなことが考えられる。 | |
1 | つり荷をクレーンで移動させている途中、水切りを確認するため、つり荷(鋼製角パイプ材)を傾け斜めつりし、部材に装着していたつり治具のU字形金具の口部分を押し広げ、U字形金具の一方の差込穴からピンが抜けたこと |
2 | クレーンによる荷のつり上げ作業中、つり荷の下で作業を行っていたこと |
3 | 臨時の水切り確認作業は度々行われる作業であるにも係らず、その場合の適切な作業方法を定めていなかったこと、また、作業者の安全衛生教育も不十分であったこと |
対策
同種災害防止のためには次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 水(酸液)切りが確実に実施されたかどうかを確認する作業は、通常の手順どおりにクレーンでメッキ作業場所に移動させる前に実施し、クレーンでつり上げて移動させる前に水切りを完了しておくこと |
2 | クレーンを使用して作業を行う場合には、つり荷の下やその周辺付近への作業者の立入りを禁止し、クレーン運転者および作業指揮者の双方がその立入り禁止区域内に人がいないことを確認し合うこと |
3 | 前処理、水切り、メッキ等の一連の工程については、臨時的に必要となる作業も含めて安全な作業手順を予め定め、これをもとに作業者に対し安全衛生教育を十分行っておくこと |