圧延機の調整作業中、動力伝道回転軸(カップリング)に巻き込まれ死亡
業種 | 製鉄・製鋼・圧延業 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
事業場規模 | 100〜299人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | ロール機(印刷ロール機を除く。) | |||||
災害の種類(事故の型) | はさまれ、巻き込まれ | |||||
被害者数 |
|
|||||
発生要因(物) | 作業手順の誤り | |||||
発生要因(人) | 無意識行動 | |||||
発生要因(管理) | 安全装置をはずす、無効にする |
No.101060
発生状況
この災害は、圧延工場において圧延機(ロール機)を稼動させながら、製品である平綱の流れの調整と監視をする作業中に発生したものである。 圧延工場では、ビレットを加熱・圧延し小型の平綱を製造するものである。この工場での圧延ラインの工程は、[1]加熱炉でビレット(アルミ鋳塊)を加熱する釜屋作業、[2]圧延機を通るビレットを注文どおりの平綱とするため、サイズの調整を監視するロール作業、[3]製造された平綱を所定の寸法に切断し、結束する精製作業である。 災害が発生したのは[2]のロール作業であり、ここには調整班として4名の作業者と端取り班として5名の作業者が配置されていた。被災者は、調整班の班長であり、圧延機のロール部を調整し平綱をまっすぐ流れるようにする調整作業を、ラインを停止せず、圧延機のテーブルの上に乗り行っていたところ、高速回転していた圧延機の2本のカップリング(圧延機と駆動モーターをつなぎ、動力を伝達する駆動軸)に誤って巻き込まれ、被災した。なお、カップリングによる巻き込まれ防止措置として、圧延機にメッシュ型の鉄製覆いが取り付けられているが、被災時にはその鉄製覆いがはずされていた。また、圧延工場全体の安全管理について工場長は、圧延ラインのそれぞれの作業班長との連絡調整および作業場の安全パトロールを行う体制等が確立されていないことに加え、作業者の不安全行動防止のための、標準作業手順書が定められてなく、作業者への安全衛生教育も不十分であった。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 平綱製造中、圧延機に不具合が起き圧延機を調整する作業にもかかわらず、ラインを停止しせず作業を行ったこと |
2 | . カップリングには、メッシュ型の鉄製覆い2枚が、巻き込まれ防止措置として取り付けられていたが、災害発生時点には、2枚とも取り外していたこと |
3 | 圧延工場全体の安全管理を行う立場にある工場長の役割、職務、権限が明確でなく、災害発生時、指揮監督する立場にあった工場長は、別の場所で作業を行っており、作業班長への作業指示、監督等を行っていなかったこと |
4 | 作業の危険性、安全な作業方法等に関する標準作業手順書が定められておらず、作業者への安全衛生教育が不十分であったこと |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 圧延機に不具合が起き圧延機を調整する場合は、ラインを一旦停止してから調整作業をすること |
2 | カップリングによる巻き込まれ防止措置として取付けられているメッシュ型の鉄製覆いについては、作業中は取りはずすことなく、確実に取り付けておくこと |
3 | 圧延工場全体の安全管理を行う立場にある工場長は、その役割、職務、権限を明確にし、釜屋作業、ロール作業、精製作業それぞれの作業班長への作業指示、巡回点検、監督等を確実に行うこと |
4 | 標準作業手順書を作成した上で、作業者に安全衛生教育を徹底すること |