電子複写機部品を塗装する自動機械の清掃中、装置が動いてはさまれ死亡
業種 | 電子機器用・通信機器用部品製造業 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の一般動力機械 | |||||
災害の種類(事故の型) | はさまれ、巻き込まれ | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 防護・安全装置がない | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 不意の危険に対する措置の不履行 |
No.101056
発生状況
この災害は、電子複写機を製造する工場で発生したものである。 作業者Aは、自動塗装装置の運転を担当しているが、災害発生当日は複写機の製造ラインが忙しかったので、その応援にまわり、その間、自動塗装装置を午前中は休止し、午後は課長Bが運転を担当していた。 夕方、応援に行っていたAが自分の担当する自動塗装装置のところに戻ってきたので、Bの指示により装置の清掃をAとBの2人で行うことになった。 作業の内容は、Bは自動塗装装置のスプレーガンを外して、水とアセトンで汚れの除去を、Aは自動塗装装置に材料を供給・取り出しする自動搬送台車の可動域に立ち入り、塗装装置の下部にあるフィルターを交換した後、電気掃除機で床に落ちている塗装「かす」の吸引を行っていた。 清掃を始めて約1時間経ったとき、突然、自動搬送台車が動き出し、Aがはさまれた。Bはすぐに操作盤の電源を切り、Aを救出したが、既に死亡していた。 自動搬送台車の稼動域の手前約30cmには鎖が張られ、これを外すと塗装装置と搬送装置の電源が遮断されるようにインタロックされていた。その機構は、鎖の一端がリレースイッチにつながっていて、鎖が張られているときは、その重量によりリレーが作動して、通電状態になるというものである。AとBは、清掃作業に取りかかる際、作業の邪魔になる鎖は外したが、操作盤の元電源は切らなかった。Bは鎖が張られていた辺りで清掃作業を行っていたが、誤って鎖を引っ張ったため通電状態になって搬送装置が動き出したものである。 自動塗装装置の清掃作業は1週間に1度の頻度で行われていたが、電源遮断方法等の手順を盛り込んだ作業手順書は作成されていなかった。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 自動塗装装置の元電源を遮断しないまま清掃作業を行ったこと、またインターロックの電源遮断方法が適切でなかったこと 清掃作業を始めるに当たり、AとBは、操作盤の元電源を遮断せずに、鎖を外すことで電源を遮断した。また、鎖によるインターロックは、鎖の重量がかかっているか、いないかによる不安定な機構となっていたため、Bが誤って外していた鎖を引っ張ったことで通電状態となり、搬送装置が動き出してAがはさまれたものである。 |
2 | 清掃作業についての作業手順書が作成されていなかったこと 自動塗装装置の清掃作業は1週間に1度の頻度で行われていたにもかかわらず、電源の遮断等、安全に作業を行うために必要な事項を盛り込んだ作業手順書が作成されていなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 自動塗装装置の清掃時には、電源が確実に遮断されるようにすること 自動搬送台車の可動域で行われる清掃作業の際には、開放したときに電源が確実に遮断されるインターロック機構による扉を設けた安全柵の設置、装置の可動域に作業者がいることを検知し電源を遮断するエリアセンサーの設置等の安全措置を講じる。さらに、作業者が危険を感じたときに直ちに装置を停止できる非常停止装置を設けることも重要である。また、元電源を遮断し「清掃中、電源入れるな」との表示をした上で作業を行うことも必要である。 |
2 | 清掃作業の作業手順書を作成すること 自動塗装装置の清掃作業は、自動搬送台車の可動域に立ち入って行われる危険な作業であることから、元電源の遮断、操作盤への「清掃中、電源入れるな」の表示、複数の作業者の役割分担と作業位置等を含む安全な作業のための作業手順書を作成する。さらに、作業手順書の内容を関係作業者に周知徹底することが重要である。 |