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労働災害事例

自動車用バッテリーの極板組立自動機械にはさまれ死亡

自動車用バッテリーの極板組立自動機械にはさまれ死亡
業種 その他の電気機械器具製造業
事業場規模 300〜999人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 産業用ロボット
災害の種類(事故の型) はさまれ、巻き込まれ
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:0人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物) 故障未修理
発生要因(人) 場面行動
発生要因(管理) 不意の危険に対する措置の不履行

No.101055

発生状況

 この災害は、電気機器を製造する工場の自動車用バッテリーの組立を行う作業場において発生したものである。
 災害発生当日、職長Aは、他の作業者2名とともに、キャストンと呼ばれる一定数の極板を専用の枠に入れて溶接し、バッテリーのケース(電解槽)に挿入する作業を行う自動機械による自動車用バッテリーの組立作業に従事していた。
 作業を開始して約3時間経ったとき、Aはキャストンに材料を供給する装置で、極板を入れる枠が破損しているのを見つけた。
 この材料供給装置は、放射状に取り付けられた8本のアームが回転し、アームの先端にセットされた材料が約20秒ごとにキャストンに供給されるものである。Aは、キャストンのスイッチを停止に切り替えずに、キャストンの周囲に設けられた安全柵の扉を開け、破損した材料を取り除こうとしたが、材料供給装置が回転し、アームとキャストンのフレームとの間にはさまれた。その後、Aは救出され、病院に搬送されたが死亡した。
 Aは、この工場に25年間勤務するベテランであったが、自動車用バッテリーの組立作業には3ヶ月前に配置替えになったばかりで、この3ヶ月間、Aに対し組立作業の方法、装置の取り扱いに関する安全衛生教育は実施されていなかった。
 また、この工場では、自動運転中の機械装置に異常が発生したときの復旧作業の方法、機械装置に近づく際の手順等について、これを盛り込んだ作業手順書が作成されておらず、教育も実施されていなかった。そのため、異常発生時の復旧操作は職長任せにされていた。

原因

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1  キャストンの危険区域への立入防止措置が不十分であったこと
 キャストンの材料供給個所の周囲には、安全柵が設けられていたが、柵に設けられた扉を開放したときに装置が停止するようなインターロック機構や作業者が危険を感じたときに機械装置を停止させる非常停止装置は設けられていなかった。
2  非定常作業についての作業手順書が作成されていなかったこと
 自動運転中の機械装置に異常が生じた場合等の非定常作業について、復旧作業の方法、機械装置に近づく際の手順等を盛り込んだ作業手順書が作成されておらず、実際に異常が発生したときの復旧操作は職長任せにしていた。
3  安全衛生教育が実施されていなかったこと
 運転中の機械装置に異常が発生したときの復旧操作に関し、工場として作業者に安全衛生教育を実施していなかった。さらに、新たに配置された作業者に対し、その職場で行われる作業の方法に関する安全衛生教育も実施していなかった。

対策

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1  立入禁止の柵の扉をインターロック機構とすること
 危険区域への立入りを禁止するため、柵に設けた扉を開放したときに機械装置全体が停止するようなインターロック機構および作業者が危険を感じたときに直ちに機械装置を停止できるような非常停止装置を設ける。  また、作業開始前に、安全装置の作動が正常なことを確認することも重要である。
2  異常時の修復作業等の非定常作業についても作業手順書を作成すること
 自動運転される機械装置であっても、運転中に発生した異常の復旧作業や点検・整備等のため危険区域内に立ち入ることは避けられないので、このような非定常作業の安全を確保するための作業手順書を作成し、関係作業者に教育訓練を実施する。
3  安全衛生教育を実施すること
 非定常時の作業手順の徹底をはじめとして、安全に作業を行うため、すべての作業者に対して安全衛生教育を定期的に実施する。  また、勤務年数の長いベテランであっても配置替えが行われたときには、新たに担当する作業についての安全衛生を実施しなければならない。