ステンレスコイルの冷間圧延工場において、自動溶接装置にはさまれ死亡
業種 | 製鉄・製鋼・圧延業 | |||||
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事業場規模 | 1000人以上 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 溶接装置 | |||||
災害の種類(事故の型) | はさまれ、巻き込まれ | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 防護・安全装置が不完全 | |||||
発生要因(人) | 場面行動 | |||||
発生要因(管理) | 不意の危険に対する措置の不履行 |
No.101054
発生状況
この災害は、ステンレスの冷間圧延工場の熱連続焼鈍を行う作業場において発生したものである。 災害発生当日、作業者AとBの2人は、熱連続焼鈍作業の前工程として、ステンレスコイル(鋼帯)から引き出したステンレス薄板の先端を切断したものと先行の薄板とを突き合せて、シャーウェルダー装置により溶接する作業を行っていた。 午後の作業を開始して間もなく、ステンレスコイル2個をセットすることとなり、先ずBが1個目のコイルをセットした後、続いてAが2個目のコイルをセットしようとしたときに、シャーウェルダー装置の動作異常を発見した。 Aは、シャーウェルダー装置を停止することなく、装置の周囲に設置されていた安全柵の内側に立ち入り、異常の状況を確認しているときに、シャーウェルダー装置が作動し、装置とコイル入側のワーククランプとの間にはさまれた。その後、Aは救急車で病院に搬送されたが死亡した。 Aは安全柵に設けられた扉を開放してシャーウェルダー装置に近づいたものだが、事業場では作業者が柵の内側に立ち入るときは装置の電源を切ることを原則としており、柵の扉が開放されたときに装置が停止するインターロック機構や装置の近くで作業者が危険を感じたときに直ちに装置を停止させる非常停止装置は設けられていなかった。 なお、シャーウェルダー装置について、安全柵の内側に立ち入って行う異常発生時の清掃、点検、復旧等の作業を安全に行うための作業手順書は作成されておらず、十分な安全衛生教育も行われていなかった。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 危険区域への立入防止措置が不十分であったこと シャーウェルダー装置の周囲には安全柵が設けられていたが、柵の扉を開放したときに装置が停止するインターロック機構や作業者が危険を感じたときに直ちに装置を停止させる非常停止装置は設けられていなかった。 |
2 | 作業手順書が作成されていなかったこと シャーウェルダー装置について、安全柵の内側に立ち入って行う異常発生時の復旧、清掃、点検復旧等の非定常作業を安全に行うための作業手順書は作成されていなかった。また、本事業場では、作業者が安全柵の内側に立ち入るときはシャーウェルダー装置の電源を切ることを原則としていたが、関係作業者に周知徹底されていなかった。 |
3 | 安全衛生教育が十分に行われていなかったこと 危険な装置を使用する作業にもかかわらず、作業者に対して十分な安全衛生教育が行われていなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 危険区域へ十分な立入防止措置を講ずること 自動運転中の機械装置の危険区域に作業者が立ち入ること防止するため安全柵を危険区域の周囲に設けるほか、やむを得ず危険区域に立ち入って作業を行う場合を想定し、安全柵の扉が開放された場合に機械設備が停止するインターロック機構や作業者が危険を感じたときに直ちに機械装置を停止させる非常停止装置を設置する。 |
2 | 非定常作業について作業手順書を作成すること 自動運転される機械設備についても、異常が発生したときの清掃、点検復旧等の非定常作業を行う場合に、機械設備を全停止または作業者の安全確保ができるような部分停止をして危険区域に立ち入ること、操作盤に「起動停止」の表示を行うこと、監視人を配置すること等を盛り込んだ作業手順書を作成する。 さらに、その内容を関係作業者に周知徹底することも重要である。 |
3 | 作業者に対し、十分な安全衛生教育を行うこと 危険な装置を使用する作業については、非定常作業も含めて、作業手順書をもとに、作業者に対し十分な安全衛生教育を行うことが必要である。 |