昇降式ベルトコンベアと固定式ベルトコンベアの間にはさまれ死亡
業種 | クリーニング業 | |||||
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事業場規模 | 16〜29人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | エレベータ、リフト | |||||
災害の種類(事故の型) | はさまれ、巻き込まれ | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 防護・安全装置がない | |||||
発生要因(人) | 場面行動 | |||||
発生要因(管理) | 不意の危険に対する措置の不履行 |
No.101052
発生状況
この災害は、従業員25名の洗濯工場の昇降式ベルトコンベアと固定式ベルトコンベアとの間で発生したものである。 この工場では、ホテル等で使用する業務用のタオル、シーツ、浴衣等の洗濯を行っており、1階で洗い、すすぎ、脱水を行った後、2階で乾燥を行い、その後1階で仕上げ(アイロンがけと折りたたみ)と結束を行っている。最終工程の仕上げと結束以外の工程は自動で行われ、1階と2階の移動のため昇降式ベルトコンベア(リフト)が稼動している。 災害発生当日、作業者Aは、朝から最終工程のシーツを結束する作業に一人で従事していた。午後3時頃、Aは、結束作業場所の隣にある脱水機の出口側に洗濯物が落ちているのを見つけ、これを拾おうとしたところ、脱水が終了した洗濯物を2階に搬送するため昇降式ベルトコンベアが降下し、この昇降式ベルトコンベアと脱水機の送出用の固定式ベルトコンベアとの間にはさまれた。Aは直ちに病院に移送されたが、死亡した。 昇降式ベルトコンベアは昇降中に警報音が鳴るようになっていたが、周囲の騒音で聞きづらくなっていた。また、脱水機の排出用ベルトコンベアと昇降式ベルトコンベアの周囲は柵で囲われていたが、柵には内側に立ち入るための扉が設けられており、扉は施錠することができず、いつでも容易に立ち入れる状態であった。 工場では、搬送用のベルトコンベアから洗濯物が落ちることは度々あり、その都度、作業者が拾い上げ回収していたが、この作業を安全に行うための作業手順書は作成されていなかった。このため、近くにいる作業者がその場で判断して回収作業を行っていた。 なお、工場では、法律で必要とされる安全衛生推進者が選任されておらず、従業員に対する安全衛生教育も実施されていなかった。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 昇降式ベルトコンベア周囲の安全措置が不十分であったこと 脱水機の排出用ベルトコンベアと昇降式ベルトコンベアの周囲は柵で囲われていたが、柵の扉には施錠がされておらず、装置が稼動中に作業者が容易に柵の内側に立ち入れる状態であった。また、昇降式ベルトコンベアの昇降中には警報音が鳴るようになっていたが、周囲の騒音で作業者が気づきにくかった。 |
2 | 作業手順書が作成されていなかったこと この工場は、ほとんど全自動に近い状態で作業が進められていて、作業者も手作業が必要なところだけに配置されていたが、ベルトコンベアから洗濯物の一部が落下し回収しなければならない場合等、異常が発生したときの作業方法について明確に定められておらず、近くにいる作業者の判断で対処していた。 |
3 | 安全衛生管理が不十分だったこと 安全衛生推進者が選任されてなく、従業員に対する安全衛生教育も実施されていなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 危険区域の防護を確実に実施すること 機械設備のはさまれ箇所、巻き込まれ箇所等の危険区域の周囲は堅固な柵や覆いで確実に防護するとともに、点検作業などでこの区域に出入りする場合に設ける扉は、インターロック機構とし、扉を開放した場合には機械設備が停止するシステムにする。 |
2 | 異常時の措置も含めて作業手順書を整備し、その内容を作業者に周知させること 自動ラインであってもベルトコンベアから洗濯物の一部が落下するようなことは避けられないので、その場合の回収方法、使用する用具、ラインの停止、監視人の配置等について作業手順書を作成するとともに、その内容を関係作業者に周知徹底することが重要である。 |
3 | 安全衛生管理体制を整備すること 安全衛生推進者を選任し、安全と健康確保のための各種措置の検討、安全衛生教育の実施、職場の巡視等を行わせる必要がある。 なお、一人作業の場合に異常が発生したときの連絡方法についてもあらかじめ定めておき、関係作業者に徹底することも重要である。 |