薪にする桑の木を切断中、可搬型丸のこ盤で切創し死亡
業種 | 機械(精密機械を除く)器具製造業 | |||||
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事業場規模 | 1〜4人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 丸のこ盤 | |||||
災害の種類(事故の型) | 切れ、こすれ | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 防護・安全装置が不完全 | |||||
発生要因(人) | 無意識行動 | |||||
発生要因(管理) | 安全装置をはずす、無効にする |
No.101048
発生状況
この災害は、可搬型丸のこ盤を使用して工場のストーブで使う薪にする桑の木を切断しているときに発生したものである。 災害発生当日、作業者Aは、前日に引き続き朝から、工場近隣の農家から運び込まれて工場の南側に積んであった、暖房用ストーブの薪にする桑の木を可搬型丸のこ盤で適当な長さに切断する作業に取りかかった。 切断作業に使用した丸のこ盤は、木工用の100V、4,700回転/分で、のこ歯の直径18.5cmのものであったが、燃料用の木材、不要となったパレットの切断に使用するためにAが会社に頼んで購入し、社内ではAだけが使用していたものである。 昼頃、外出先から戻った社長および専務は、屋外で作業をしているはずのAの姿が見えないので、探したところ、Aが丸のこ盤で切創を負い倒れているのを発見した。Aの近くには、切断途中の桑の木と高さ23cmの腰掛が転がっていたことから、Aは腰掛に座った姿勢で丸のこ盤を持ち、桑の木を切断中に、誤って切創を負ったものである。 Aの服装は、会社支給の作業服、安全靴、ゴムの滑り止め付きの手袋を着用していた。 Aが使用していた丸のこ盤には、歯の接触予防装置が取り付けられていたが、災害が発生したときには、歯の覆いが開放状態となるように紐で固定されていて、接触予防装置として機能しない状態となっていた。また、可搬型の丸のこ盤に係る使用要領や作業手順書は、当該丸のこ盤をAのみが使用していたことから会社として作成していなかった。 なお、Aが所属する会社では、従業員に対し、工具類の点検や安全な使用等についての安全衛生教育は実施していなかった。 |
原因
この災害の原因としては、次のことが考えられる。 | |
1 | 歯の接触予防装置の機能を失わせていたこと 可搬型丸のこ盤に取り付けられていた歯の接触予防装置を開放した状態で固定し、安全装置として機能しない状態で使用したため、作業中に歯に接触した。 |
2 | 可搬型丸のこ盤の使用要領や作業手順書を作成していなかったこと 可搬型丸のこ盤を使用する者がA一人に限定されていたこともあり、安全な取り扱い方法を盛り込んだ使用要領や作業手順書を作成していなかった。 |
3 | 安全衛生教育を実施していなかったこと 会社では、従業員に対する安全衛生教育を実施していなかったため、工具類の作業開始前点検の実施や安全な取り扱いについて、従業員の認識は薄かった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 丸のこ盤の安全装置を正しく使用すること 丸のこ盤には、歯の接触予防装置が取り付けられているので、作業者に正しい使用方法と作業開始前の点検の実施について十分教育する。特に、取り付けられている安全装置の機能を失わせて使用することのないよう周知徹底することが重要である。 |
2 | 工具類の使用要領や作業手順書を整備すること 使用者が限定されている工具類であっても、社内で使用されるものについては、例外なく点検方法や安全な取り扱いについての使用要領や作業手順書を整備し、その内容を従業員に周知させる。 |
3 | 安全衛生教育を実施すること 今回の災害で使用されていた可搬型の丸のこ盤については、作業手順書等をもとに、その正しい使用方法、安全装置の適正な使用等について、安全衛生教育を従業員に対し実施する。 |