荷下ろし作業中、トラックの荷台から転落し死亡
業種 | 各種商品卸売業 | |||||
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事業場規模 | 1〜4人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | トラック | |||||
災害の種類(事故の型) | 墜落、転落 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 作業箇所の間隔空間の不足 | |||||
発生要因(人) | 無意識行動 | |||||
発生要因(管理) | 不意の危険に対する措置の不履行 |
No.101047
発生状況
この災害は、トラックから葦簾(よしず)を荷下ろしする作業中、作業者がトラックの荷台から転落したものである。 葦簾の輸入および販売を行うZ社は、経営者以外、常用の従業員は経理担当だけであり、葦簾の運搬や選別の作業があるときのみ、臨時に作業者を雇用していた。 災害発生当日、葦簾を運搬してきた10tトラックが到着したので、Z社の社長、臨時に雇用された作業者Aおよびトラック運転手の3名で、トラックの荷台に縦方向3列、横方向3列に積まれた葦簾の束(1束が高さ約2.5m、幅約3.5m、重さ30kg)を下ろし、倉庫に搬入する作業を開始した。 作業開始前に社長は、運転手が荷台の上から葦簾の束を地上の社長とAに手渡しし、社長とAが倉庫に搬入する役割分担を指示した。 作業を始めて約1時間経ったとき、社長は「外出してくるから帰るまで休んでいてくれ」と言ってその場を離れた。 その約1時間30分後、外出から帰ってきた社長もAが一人で荷台の上の葦簾を下ろしていたのを見かけ、指示した役割分担と違うので近づいたところ、Aは「早く作業を終わらせたい」と社長に告げた。社長は一言「危ないよ」と注意し、そのまま事務所に入ろうとした。 その直後、「あっ」という声がしたので、社長が振り返ると、Aが荷台に積まれた葦簾の上から、バランスを崩して地上に転落するのが見えた。 Z社では、Aのために保護帽を用意していたが、Aにこれを着用させていなかった。なお、Z社では、葦簾の運搬や選別をさせるために臨時に雇用した作業者に対して安全衛生教育を実施していなかった。 |
原因
この災害の原因としては、次のことが考えられる。 | |
1 | 作業者に保護帽を着用させずに、危険な作業に従事させたこと トラックの荷台に積まれた葦簾の上は、地上からの高さが3〜4mにもなるが、保護具を使用させないでこの上で作業を行うことを黙認した。そのため、Aは危険な作業を続け、転落した。 |
2 | 社長が指示した役割と違う作業を黙認したこと 社長が指示したAの役割は、地上で葦簾の束を受け取り、倉庫に搬入することであったが、Aは早く作業を終わらせたいことから、指示されていない葦簾の束を地上に下ろす作業を行っていた。社長はその作業を目撃したが黙認し、結果としてAが転落した。 |
3 | 作業者に対し安全衛生教育を行っていなかったこと |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | トラック荷台から荷下ろしする場合は、作業者に保護帽を着用させること 荷下ろし作業を行う場合は、作業者全員に保護帽を着用させることが必要である。 |
2 | 作業者に対し作業分担等を明確に指示するとともに、危険な行為を行ったときはすぐ止めさせること 転落の危険のあるトラックの荷台の上から荷下ろしの作業を行う場合には、作業の責任者を定めて、荷台の上で荷を下ろす者、地上でそれを受け取る者、倉庫に搬入する者等、役割を作業開始前に明確に指示し、指示した以外の作業を行わないよう管理監督する。 なお、作業者が指示した以外の作業を行っている場合には、単に「危ないよ」と注意するだけではなく、直ちに作業を中止させることが重要である。 |
3 | 作業者に対し安全衛生教育を行うこと 従業員を雇用した場合には、安全衛生教育を実施するなどの安全衛生管理を実施しなければならない。臨時に雇用した従業員に対しても、従事する作業の危険性や安全な作業方法等について安全衛生教育を実施する必要がある。 |