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労働災害事例

車両積載形移動式トラッククレーンで荷下ろし中、荷台から転落

車両積載形移動式トラッククレーンで荷下ろし中、荷台から転落
業種 その他の金属製品製造業
事業場規模 30〜99人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 移動式クレーン
災害の種類(事故の型) 墜落、転落
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:0人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物) 作業箇所の間隔空間の不足
発生要因(人) 無意識行動
発生要因(管理) 不意の危険に対する措置の不履行

No.101045

発生状況

 この災害は、車両積載形移動式トラッククレーンによりスクラップの荷下ろし作業中に作業者が転落し死亡したものである。
 作業者Aが所属するZ社は、発電所の配管等の製作および現地組み立て等を行っており、Aは、親会社からZ社が請け負った現地組み立て工事の現場責任者の立場にあった。
 災害発生当日、Aは、工事現場に一度出勤して打ち合わせを行った後、本社との打合せのため自家用車で移動した。午後2時頃、Aが本社での打合せを終え、工事現場に戻ろうとしたところ、Aが勤務する工事現場で解体した各種機械設備のスクラップが車両積載形移動式トラッククレーン(つり上げ荷重2.93t)で運搬されてきたので、この荷下ろしを手伝うことになった。Aは本社の担当工場長Bを呼びに行き、午後2時半から荷下ろし作業を開始した。
 作業の分担は、作業の指揮をB、玉掛け作業をAおよび運送会社の運転手、クレーンの操作を運送会社の作業者で行うことになった。
 続いて次の荷下ろしをするため、最初の荷を下ろし終え、Aは荷台上で、2つ目の荷(320cm×135cm、高さ70cm、重さ300kg)の玉掛けを行った。そのとき、Bが、クレーンのフックの位置が荷とずれているのを見つけ、移動させるためオペレータに指示を送っていたところ、荷がつり上がりAのいる方に振れた。Aはあわてて後ずさりしたが、荷台のあおりに足を引っ掛け、荷台から転落した。
 当日、工事現場からスクラップが搬入されることは、予定されていたが、荷下ろし作業の担当者は決められていなかった。また、実際の作業は、荷下ろし場所に居合わせた4名で行われたが、役割分担や作業方法についての打ち合わせは行われず、Bの指示に従って行われていた。本社敷地内では、たびたび荷下ろし作業が行われていたが、Z社では作業手順書を整備していなかった。
 Aは、災害発生時、本社には打合せのために来ていたものだが、自分が現場責任者となっている工事現場からの荷の搬入であったことから荷下ろし作業に加わったものである。服装は作業服であったが、保護帽、安全靴は未着用であった。なお、Aは、玉掛け作業および移動式クレーンの運転の資格を所持していた。

原因

 この災害の原因としては、次のことが考えられる。
1  他事業場の者を安易に作業に参加させたこと
被災したAは、Z社の社員であるが、本来の勤務先は工事現場であり、本社に打ち合わせに来た際、同所で行われた荷下ろし作業に加わったものである。初顔合わせのメンバーで共同作業が始められたが、役割分担や作業方法についての打合せは行われず、Aも保護帽、安全靴等、必要な保護具を使用していなかった。
2  作業手順書が作成されていなかったこと
 本社敷地内での荷下ろし作業はたびたび行われているにもかかわらず、作業を行うメンバーと役割分担、安全な作業方法を定めた作業手順書を作成しておらず安全な作業方法が周知されていなかった。
3  作業前に作業方法、役割分担についての打合せが行われなかったこと
 作業前に安全な作業に必要な事項についての打合せがないまま作業が始められ、メンバーの役割や作業手順はBの指示に従って行われた。そのため、各メンバーはお互いの役割や行動、作業の流れ等の理解が不十分なまま共同作業を行った。

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1  作業を行うメンバーをあらかじめ決めてしておくこと
 毎日行われる作業以外であっても、あらかじめ予定されている作業については、担当する作業者を決めておくようにする。突発的な事情により、予定されていなかった作業者が加わる場合には、作業を始める前に教育を行い、お互いの役割分担や安全な作業方法について確認する。また、作業に適した服装や必要な保護具を着用していることを作業前に確認することも重要である。
2  作業手順書を整備すること
 非定常作業であっても、繰り返し行われるものについては、安全な作業のポイントを盛り込んだ作業手順書を作成する。特に、共同作業を行う場合で、メンバーを固定できないような場合には、各メンバーの役割や各手順における行動を作業手順書で明らかにし、予めこれを教育しておくことが重要である。
3  作業開始前に作業手順の確認を行うこと
 作業開始前に作業指揮者を中心に作業の手順、作業者の配置について打ち合わせを行うとともに、指揮者は移動式クレーン運転手や玉掛け者の資格を事前に確認する。