スケトウダラ漁で帰港途中の漁船が転覆
業種 | 漁業 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
事業場規模 | 1〜4人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の乗物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 交通事故(その他) | |||||
被害者数 |
|
|||||
発生要因(物) | 自然の危険 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 不意の危険に対する措置の不履行 |
No.101044
発生状況
この災害は、スケトウダラの刺し網漁を行った漁船が帰港途中に転覆し、乗組員3名が行方不明になったものである。 転覆した漁船を所有するZ社では、所属する漁業協同組合が中心となり、スケトウダラ漁を行っている。Z社が所有する漁船は1隻のみで、漁は船長Aおよび2名の乗組員が担当し、捕獲した魚の加工を季節雇用の作業者約20名が工場内で行っている。 当日、組合ではZ社の漁船を含めた5隻の漁船で沿岸の漁場に向かうこととなり午後10時頃、出港した。出港後30分で船は予定地点に到着したので、乗船していた3名は海に仕掛けていた刺し網を揚げる作業(揚網(ようもう)という)を開始した。揚網作業は、翌朝の午前1時頃に終了し、船は僚船とともに帰港を開始した。その途中、僚船の船長はAから無線で「魚は甲板に積んだ。網が50cmほどずれ、船が傾いたので、港に向けて走りながら、乗組員と網を直す」と連絡が受けたが、僚船はそのまま港に向かった。さらに、AはZ社の社長に「魚は6t位ある」と連絡したが、その後は連絡が途絶え、レーダーからも影が消えた。 そこで、組合所属の各漁船で、付近を捜したところ、転覆している船を発見したが、乗組員3名は行方不明となった。 転覆した漁船は、巻き上げた網のほかに、魚を15t程度積むことができるが、通常、甲板には2t程度とし、それ以上は船倉に入れていた。また、乗組員の人数分の救命胴衣が常に用意されていたが、その救命胴衣は転覆した船内から発見された。 なお、当日の漁は、低気圧が接近しているため、予定より2時間早めて行われたが、海上は風が強く、波も高く荒れていた。 |
原因
この災害の原因としては、次のことが考えられる。 | |
1 | 気象状況の悪い中、漁を行ったこと 当日は、低気圧の接近により風と波が強くなることが予想されたにもかかわらず、漁を中止にせず、予定より2時間早めただけで、出港した。 |
2 | 甲板上に乗せた網と魚で船の重心が高くなっていたこと 災害発生時は、甲板に乗せた6tの魚と巻き上げた網により船の重心が高くなり、低気圧の影響で強い横風と横波を受けたため、船が不安定な状態となって転覆した。 |
3 | 船の積荷が傾いたときに僚船がそのまま港に向かったこと A船長から「船を走らせながら、ずれた積荷を直す」との連絡を僚船は受けたが、そのまま、港に向かった結果、転覆した漁船の乗組員を救助することができなかった。 |
4 | 乗組員が救命胴衣を着用していなかったこと 用意された救命胴衣が転覆した船内にあったことから、救命胴衣を着用しないまま作業を行い、船が傾き船外に投げ出されたき、救助されなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 気象状況を確認し無理な出漁は行わないこと 低気圧が接近すると通常でも海が荒れ、想定外の突風が生じてることもあることから、出漁の可否の判断は経験に基づくだけでなく科学的な詳細な情報の分析に基づいて行い、無理な出漁は行わないよう漁業協同組合として申し合わせるとともに、各事業者に徹底する。 また、気象条件は刻々と変化するので、船団長はその変化を的確に把握し、早め早めに帰港等の指示を出すようにする。 |
2 | 船の荷は船倉に入れ、重心を下げて航行すること 荷を甲板に置くことは、なるべく避け、安定して航行できるようにする。特に、海が荒れているときは、いつも以上に荷を船倉に入れるよう心がけることが重要である。 |
3 | 僚船同士の連絡と援助を行うこと 漁は船団として実施しているので、船団内の僚船との連絡を密に行うとともに、積荷の傾き等の異常が生じたときには相互に援助する。 また、海が荒れて帰港する場合には、相互の安全を確認し合うよう徹底する。 |
4 | 救命胴衣を必ず着用すること 漁船の作業においては、作業の邪魔になる、夏場は暑苦しい等の理由で救命胴衣の着用を嫌うケースが少なくないが、救命胴衣は万一の場合生死を分けるものであるから、必ず着用するよう徹底する。 特に、海が荒れているときには、救命胴衣の着用を僚船同士で監視するよう徹底する。 |