雑居ビルの火災で逃げ遅れた多数が煙に巻かれ死亡
業種 | その他の接客娯楽業 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
事業場規模 | 16〜29人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の仮設物、建築物、構築物等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 火災 | |||||
被害者数 |
|
|||||
発生要因(物) | 構成材料の欠陥 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 安全装置をはずす、無効にする |
No.101043
発生状況
この災害は、飲食店等が入居する雑居ビル(地下2階、地上4階建て)で発生した火災である。 災害発生当日の午前1時頃に、建物3階のエレベーターホールで火災が発生し、火は周辺に置かれていた看板、ダンボール、ビールケース等に燃え移り、ビル全体に延焼した。このとき、最上階の4階には、経営者1名、従業員15名等、計27名がいたが、出入口から煙が進入してきてすぐに店内に充満し、視界もなくなったため逃げることができずに全員が一酸化炭素中毒で死亡した。 また、3階には、従業員5名等、計20名がいて、窓の位置を知っていた従業員3名は窓から隣接ビル、路上などに飛び降りて避難することができた。しかし、残りの17名は、黒煙が店内に充満してきたため逃げ遅れ、一酸化炭素中毒で死亡した。 被害が出た建物の3階および4階の各店舗の天井には、煙探知機が設置されており、煙を感知すると防火扉が閉まるようになっていたが、火災発生時は、防火扉の周囲が布製粘着テープでとめられ、さらに建物1階にある防火扉の基盤スイッチが切られていたため、防火扉が機能せず、連動している火災報知器も鳴らなかった。また、各階に設けられている排煙窓もベニヤ板で塞がれており、機能しなかった。 建物に設けられた共用階段には、建物に入居している各店舗が普段、物置代わりに使用しており、非常階段として使用できる状況ではなかった。 なお、建物に入居している各店舗とも、従業員に対し、火災発生時の対処、緊急時の避難方法、客の誘導等についての訓練や安全衛生教育は実施していなかった。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 防火扉が機能せず、排煙窓も塞がれていたこと 各店舗には、煙を感知すると防火扉が閉まるように煙感知器が設置されていたが、防火扉を粘着テープで固定していたこと、1階の防火扉の基盤スイッチが切られていたことから、閉まらず、連動する火災報知器も機能しなかった。 さらに、排煙窓が塞がれていたため、被害が大きくなった。 |
2 | 避難通路等が確保されていなかったこと 共用階段には各店舗の不用物が物置代わりに置かれ、避難階段として使用できる状況ではなかった。 |
3 | 火災発生に備えた訓練や安全衛生教育が実施されていなかったこと |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 消防設備等の機能を確保しておくこと 店舗内にいる客などに非常事態を知らせる自動警報装置、火災の場合に自動で作動する消火設備、延焼や煙の拡散を防止する防火扉や排煙窓等の設備については、必ず設置するとともに、その機能が発揮されるよう定期的に点検する。また、それらの基盤スイッチについては、容易に切断ができないように施錠するなどして管理することが重要である。 |
2 | 避難経路を確保しておくこと 主としてエレベーター等により各階へ出入する場合であっても、共用階段は非常時に避難用として使用するものであるので、階段に物品、特に可燃性のものを積み重ねておくことなどは禁止し、積み重ねてある場合には直ちに撤去させる。 さらに、各階とも避難用の出入口または避難用はしご等を2つ以上確保し、常に有効に使用できるように点検を実施する。また、出入口の扉は引戸または外開きとする。 |
3 | 非常時を想定した訓練等を実施すること 店舗等においても、従業員に対して火災発生等非常時の避難方法、客の誘導要領等についての訓練や安全衛生教育を実施する。 |