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労働災害事例

地下廃坑の埋め立ての事前調査中に爆発

地下廃坑の埋め立ての事前調査中に爆発
業種 その他の廃棄物処理業
事業場規模 16〜29人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 可燃性のガス
災害の種類(事故の型) 爆発
被害者数
死亡者数:0人 休業者数:2人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物) 換気の欠陥
発生要因(人) 危険感覚
発生要因(管理) 不意の危険に対する措置の不履行

No.101042

発生状況

 この災害は、産業廃棄物を採石の終了した地下廃坑に廃棄するための事前調査中に発生したものである。
 災害が発生した現場では、採石の終了した廃坑に建設廃材、廃プラスチック、金属くず等の産業廃棄物を投入する作業が計画された。
 当日、元請Z社の社長、下請Y社の作業者等10人が集合し、廃棄物の投入に先立って廃坑の調査を行うこととなり、立坑に調査用ゴムボート(廃坑は水深10m位まで水没していた。)を下ろすための25t移動式クレーンを設置し、まず3人がゴムボートに乗ったまま坑内に下りた。この3人は、坑内の写真撮影などを行い30分程度で地上に戻った。
 続いて、坑内の崩壊個所の計測調査、水深測定等を行うため別の3人が入坑し、まず水深測定を行うためゴムボートからビニール紐に結んだレンガを水中に投入した。しかし、レンガが水中で何かに引っ掛かったので引き上げようとしたが、引っ掛かったまま動かなかった。
 そこで、紐を切ることにしたが、誰もカッターを持っていなかったので、作業者Aが所持していたライターで火をつけて切ることにし、ライターを点火したところ、炎が異常に大きくなり、「パチパチ」という音とともに火花がボートの周辺に広がってAと周囲の水面が炎に包まれた。
 このとき、Aは水中に飛び込み、また、他の2人はその反動で水中に投げ出され、その直後に坑内で爆発が発生した。3人はライフジャケットを着用していたため水面に浮上したが、炎と熱風で、3人のうち2人は火傷を負った。
 付近の廃坑では、既に産業廃棄物の埋め立てが行われているところがあり、メタンや硫化水素の発生が確認されていたが、今回の現場では、作業に先立つ坑内のガス濃度の測定は行わずに作業計画を作成していた。
 また、Z社およびY社では、坑内での作業中に火災や土砂崩壊等が発生することを想定した異常時の措置を事前に検討しておらず、避難訓練や被災者の救出訓練も実施していなかった。なお、Z社およびY社は、現場の作業者に対する安全衛生教育を実施していなかった。

原因

 この災害の原因としては、次のことが考えられる。
1  可燃性ガス濃度の測定を行っていなかったこと
 付近の廃坑では、メタン、硫化水素等の発生が確認されていたにもかかわらず、入坑前に坑内のガス測定を行っていなかった。そのため、可燃性ガスの存在に気づかず、ライターを点火した。
2  適切な内容の作業計画でなかったこと
 可燃性ガスの存在を把握せず、作業計画を作成したため、火気厳禁など火災・爆発を防止するための必要な措置が盛り込まれていなかった。
 また、坑内作業中に火災や土砂崩壊等の異常が発生したときの措置についても作業計画に盛り込まれていなかった。
3  作業者に対し安全衛生教育を実施していなかったこと
 安全衛生教育が実施されていなかったため、作業計画の内容や労働災害防止のための措置について作業者に周知徹底されていなかった。
4  災害等発生時に備えた避難訓練を実施していなかったこと
 災害等発生時の措置について、事前に確認されていなかったため、火災や土砂崩壊の発生を想定した避難訓練や被災者の救出訓練が行われていなかった。

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1  作業の前に可燃性ガス濃度の測定を実施すること
 廃坑の中での作業に当たっては、事前に周辺地域の地層の状態、ガスの有無等に関する情報を広く収集し、可燃性ガス等についての測定を行う。また、その日の作業開始前および作業の途中においても、必ず測定を行い、安全であることを確認することも重要である。
2  適切な内容の作業計画を作成すること
 1で実施した測定の結果を受け、坑内での爆発を防止するため、火気厳禁の措置等を盛り込んだ作業計画を作成する。
 また、火災、土砂崩壊、滞留水の突出等の異常発生時の措置についてもあらかじめ確認し、作業計画に盛り込むことが重要である。
3  作業者に対し安全衛生教育を実施すること
 元請事業者は、廃坑での作業における労働災害防止に関する安全衛生教育を必ず実施する。この場合、作業の一部を下請させるような場合には、その作業者を含めて教育するか、必要な情報の提供、援助などを行うようにする。
4  災害等発生時に備えた避難訓練を実施すること
 廃坑における作業で想定される災害等に備えて、避難用機材の準備、避難経路の確保、異常が感じられた場合の連絡方法等について作業計画に盛り込み、これを作業者に周知させるとともに、避難訓練を実施する。