職場のあんぜんサイト

  1. ホーム
  2. 労働災害事例
  3. 労働災害事例(検索結果詳細)

労働災害事例

打ち上げ花火の準備中に、誤って点火

打ち上げ花火の準備中に、誤って点火
業種 その他の製造業
事業場規模 16〜29人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 爆発性の物等
災害の種類(事故の型) 爆発
被害者数
死亡者数:0人 休業者数:3人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物) 物自体の欠陥(部外の)
発生要因(人) 危険感覚
発生要因(管理) 安全装置の調整を誤る

No.101040

発生状況

 この災害は、花火大会の打ち上げ準備中に発生したものである。
 花火大会の当日午前10時に、打ち上げを請け負ったZ社の作業指揮者A以下16名の作業者が花火の打ち上げ場所に集合し、午前中は「速射連発花火(スターマイン)」のセッティングを行った。昼食後は「ナイヤガラ花火」のセッティングを行い、それが終了した午後4時頃から電気点火系統の通電チェックのため導通試験を行うことにした。
 導通試験は、まず、スターマインについて行うこととし、Aが導通器を準備し、3名の作業者(B、CおよびD)が約60m離れた打ち上げ地点に向かった。
B〜D3名が打ち上げ地点に到着したところで、Aは、導通器の主電源を入れ、赤ランプの点灯を確認した後、電源スイッチをオンにした。
 しかし、通常であれば通電を示す緑色のランプが点灯し続けるはずが、チカチカと点滅を繰り返すのみであったので、Aは、打ち上げ地点にいるBに通電コードの断線の有無を確認するようトランシーバーで指示した。
 一方、Aは、導通器そのものが接触不良ではないかと考え、電源スイッチのオン・オフを繰り返していたところ、突然、点火玉に火がつき、そのまま導火線を伝わって花火が打ち上がった。そのため、打ち上げ地点にいたB〜D3名が、打ち上げられた花火玉に当たり、また爆発した衝撃で転倒し、骨折、火傷等を負った。
 花火の打ち上げで使用する導通器は、打ち上げ場所が変わるため、頻繁に移動して使用していた。そのため、各部が痛んできていたが、災害発生の1週間前に他所での打ち上げでは正常に作動していたため、使用前の点検は行っていなかった。
 また、Aは、花火の打ち上げについての経験は豊富であったが、導通器等打ち上げに使用する機器の構造や試験方法については詳しくなかった。
 なお、被災者らが所属するZ社は、花火製造業の看板を掲げているが、営業所の本業は運送業であり、花火に関する注文があったときのみ本社に連絡し応じていた。花火の打ち上げは、夏場の一定の時期に集中し、年間を通じてある仕事ではないため、Z社では花火打ち上げに係る常用の社員を置かず、作業者をその依頼が入る都度、経験者を臨時に採用していた。しかし、会社としては、安全な打ち上げ作業手順書の作成や作業者に対する安全衛生教育は実施しておらず、現場では作業指揮者の経験に基づく指揮に任せて作業を行っていた。

原因

この災害の原因としては、次のことが考えられる。
1  花火打ち上げに係る作業手順書の作成や作業者に対する安全衛生教育を行っていなかったこと
 Z社では、花火打ち上げに係る作業者を経験者を臨時に採用し、常用の作業者を雇用していなかったことから、会社として安全な打ち上げ作業手順書を作成することなく、現場では作業指揮者の経験に基づく指揮に任せて作業を行っていた。また、作業者に対する安全衛生教育も実施していなかった。
2  作業指揮者が導通器等打ち上げに使用する機器の構造や試験方法について熟知していなかったこと
  現場で作業指揮をしていたAは、導通器の構造や試験方法については詳しくなかった。そのため、導通試験で発生したトラブルに対し、必要な措置を講ずることができなかった。
3  導通器をはじめ、花火の打ち上げに使用する機器の点検を行わなかったこと

対策

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1

 花火の安全な打ち上げのための作業手順書を作成し、作業者に周知徹底すること
 近年の打ち上げ花火は、スターマインのように豪華に見せるため数十発の花火を連続で発射することから、1秒間で20mも延焼するような導火線の調節を行う必要があるなど高度の技術・技能が要求されている。
 したがって、事業者は、あらかじめ行う導通試験を含め新たな打ち上げ技術に伴う作業を安全に行うための手順書を作成し、これをもとに関係作業者への安全衛生教育を徹底しておく。また、作業指揮者は、作業の手順について、作業開始前に再度、関係者に確認し、徹底することが重要である。

2  導通器および導通試験について再教育を実施すること
 花火の打ち上げに先立って実施する導通試験が災害の直接の要因となったが、この試験は、花火の正常な打ち上げに欠かせない手順である。この導通試験に使用する機器類は頻繁に移動して使用されることからその配線や機能に異常を来たすことがあるので、機器の点検要領、導通試験の方法等について関係者に再教育を実施する。
 特に、導通試験を行う場合には、導火線に誤って点火することがないよう配線の分離を行う等の手順を徹底し、確実に手順どおり実施させることが重要である。
3  導通器をはじめ、花火の打ち上げに使用する機器は、使用前や定期的に点検を行い、問題があれば修理又は交換すること