車両積載形トラッククレーンを用いて鉄道用枕木の積み込み作業中、クレーンのジブが鉄道架線に触れ、感電
業種 | 鉄道軌道建設工事業 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 送配電線等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 感電 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 鉄道軌道建設工事 | ||||
災害の種類 | 移動式クレーン | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 充電部分の防護なし、不十分 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 不意の危険に対する措置の不履行 |
No.101039
発生状況
この災害は、Y鉄道の枕木交換作業に使用する枕木の運搬作業中に発生した感電災害である。 災害発生当日は、工事を請け負ったZ社によるX駅構内の枕木交換作業が予定されていた。 X駅構内の交換作業に使用する枕木は、W駅構内に置いてあったため、Z社の作業所長および軌道作業責任者の指示により作業者AとBの2名が車両積載形トラッククレーン(つり上げ荷重2.63t)を使用してW駅構内で積み込むこととなった。枕木の積み込み作業の分担は、Aがクレーンの運転操作を行い、Bが荷振れを防ぐため車両積載形トラッククレーンの荷台上でつり荷の枕木を押さえるというものであり、作業監視員は配置されなかった。 AとBは、枕木をトラックの荷台に16本積み込み、さらに枕木8本をつってトラックの荷台に積み込もうとした時に、Aが操作する車両積載形トラッククレーンのジブが作業場所の上に張られていた架線(22kV)に接触し、A、Bとも感電し、Aが死亡、Bは休業災害を負った。 災害発生当日の3日前に発注者であるY鉄道からZ社に「枕木をW駅構内に置くので、置き場所を確認しに来るよう」指示があったので、その日のうちにZ社の作業者CがW駅に行き、後で分かりやすいように上り線脇に枕木を積んでおくことをY鉄道の担当者に依頼していた。Cが指定した枕木の置き場所の上には、Y鉄道の上り線の架線と繋がっている架線が張られていることをCは確認していたが、Z社に戻って行った置き場所の報告では、架線の存在については触れなかった。 また、枕木の置き場所を指定されたY鉄道では、置き場所の上に張られている架線への給電停止や、絶縁用防護具の装着等の措置を講じていなかった。 なお、Z社では、従業員に対し、移動式クレーンの運転に係る資格取得を奨励し、Aも小型移動式クレーン運転技能講習を修了していたが、資格取得者以外の従業員に対しクレーン作業に係る安全衛生教育は実施していなかった。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 発注者であるY鉄道と工事を請け負ったZ社の連絡、それぞれの社内での報告において、安全作業に必要な情報が伝わらなかったこと 事前の枕木の置き場所の確認では、置き場所の上に充電された架線があることが確認されていたにもかかわらず、これが作業者や関係者に伝わらなかったため、作業者は感電の危険性を認識せずに作業を行った。 |
2 | 高圧の架空電線の付近におけるクレーン作業であるにもかかわらず、当該架線への給電を一時的に停止する、充電電路に絶縁用防護具を装着する等の感電防止措置が講じられていなかったこと |
3 | 車両積載形トラッククレーンによる作業の状況を監視する作業監視員が配置されていなかったこと |
4 | クレーン作業に従事する作業者全員に、従事する作業の安全についての安全衛生教育が実施されていなかったこと |
対策
同種災害を防止するためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 枕木が置いてある場所やその付近の状況等、安全に作業を行うために必要な情報の提供が円滑に行われるよう発注者、元請、下請事業場間の連絡調整等に常に努めること |
2 | 高圧の架空電線に近接する場所で移動式クレーン等を使用して作業を行わなければならない場合には、架線への給電を停止するか架空電線の充電電路に絶縁用防護具を装着すること等の措置を講ずること |
3 | 架空電線に接触するおそれがある等の危険な場所でクレーン作業を行わなければならないときは、監視員を配置して、直ちに作業を中止できるようにして行うこと |
4 | クレーン作業を行う場合には、クレーン運転操作者のみならず、クレーン運転資格を持たない補助作業に従事する作業者に対しても、クレーン作業に関する安全衛生教育を実施すること |