ホイールクレーンの過巻防止装置が誤作動して巻上が急停止し、つり荷が落下
業種 | 電気通信工事業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 移動式クレーン | |||||
災害の種類(事故の型) | 崩壊、倒壊 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 電気通信工事 | ||||
災害の種類 | クレーン等で運搬中のものが飛来・落下 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | コミュニケーションなど | |||||
発生要因(管理) | 不安全な行動のないもの |
No.101031
発生状況
本災害は、鉄塔の組み立て作業において、ホイールクレーンにより鉄塔部材を最高速度にて巻き上げていたところ、突然、過巻防止装置の誤作動により巻上げが急停止し、その反動でジブが折れ曲がり、つり荷の鉄塔部材が落下したものである。 災害が発生した工事は、既設鉄塔の移設を行うもので、既設鉄塔4基の撤去、鉄塔5基の新設、高圧電線の移設が主な工事の内容である。 災害当日は、朝から9名の作業者により3基目の鉄塔(高さ41m)の組立作業に取りかかっていた。高さ28mの部分まで組立てが終了した後、その上に据えつける箱型の鉄塔部材(高さ5.9m、重量1.2t)を地上からホイールクレーンによりつり上げ、最高速度で巻き上げた。つり荷が23mの高さに巻き上がったとき、突然、過巻防止装置が作動して巻上が急停止した。その反動により、主ジブ及び補ジブが大きく上下に揺れ、主ジブの先端部分が折れ曲がり、つり荷の鉄塔部材が補ジブとともに地面に落下した。なお、地上にいた作業者は、鉄塔部材をつり上げる際に、退避していたため、けがはなかった。 災害が発生したホイールクレーンは、ジブ先端に付いて過巻防止装置の配線に接触不良があることが分かった。災害発生時、ホイールクレーンは重量のあるつり荷を最高速度で巻き上げていたため、ジブ等に大きな振動が起き、ジブ先端の配線に接触不良が生じて断線状態となったことにより、過巻防止装置が作動したものである。 災害が発生したホイールクレーンについて、過巻防止装置の誤動作による巻上の急停止は、本工事中に2回発生していたが、いずれの場合も、その後正常に使用できたため、メーカーへの問合せ、点検等による原因究明を行っていなかった。また、異常発生について、工事日報等に記載されず、現場責任者への報告もされていなかった。 なお、本工事の作業者に対する安全衛生教育は、クレーンによる玉掛け作業と高所作業についてのみ実施され、機械設備の保守点検や異常発生時の措置等に関することは教育されていなかった。 |
原因
この災害の発生原因は、ホイールクレーンに生じた過巻防止装置の配線の接触不良による誤作動について、直ちに原因究明や修理を行うことなく、そのまま放置し使用し続けたことであるが、これらが行われなかった要因として次のことが考えられる。 | |
1 | 誤作動の発生について、現場責任者に報告されなかったこと 過去に発生した過巻防止装置の誤作動について、工事日報に記載されず、現場責任者への報告もされなかった。そのため、現場責任者はホイールクレーンの異常について認識していなかった。 |
2 | 安全衛生教育の内容が不十分であったこと 作業者に対する安全衛生教育は実施されていたが、機械設備の保守点検や異常発生時の措置等に関することは教育されていなかった。そのため、ホイールクレーンの異常が放置された。 |
対策
同種災害の防止のためには、機械設備に発生した異常についてはメーカーへの問合せ、点検等を行って原因究明を行い、修理改善の後、使用することが必要であり、このためには次のような対策を徹底しなければならない。なお、工期の都合上、使用を中止できないものについては、直ちに代替の機材を手配することも重要である。 | |
1 | 機械設備に発生した異常については、直ちに現場責任者に報告すること 機械設備に発生したい異常については、些細なものであっても必ず現場責任者に報告する。さらに、工事日報等に記載し、関係者全員に周知させることも重要である。現場責任者は報告に基づいて点検、修理等の対策をとらなければならない。 |
2 | 作業の内容に応じた安全衛生教育を実施すること 作業者には、作業や工事の内容に応じた必要な事項を全て教育し、安全な作業方法の周知徹底する。特に非定常作業や異常発生時の対応についても教育しておくことが必要である。 |