ホイールクレーンでつり上げた荷を下ろすため、ジブを倒したところ、クレーンが転倒
業種 | 建築設備工事業 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
事業場規模 | 1〜4人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 移動式クレーン | |||||
災害の種類(事故の型) | 転倒 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | その他の建設工事 | ||||
災害の種類 | 移動式クレーン | |||||
被害者数 |
|
|||||
発生要因(物) | 不適当な機械、装置の使用 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 安全装置をはずす、無効にする |
No.101030
発生状況
この災害は、発注会社の工場内でのコジェネレーション施設の新設工事のうち、施設の防音壁を建築する工事において、ホイールクレーンを用いて防音パネルを運搬中にクレーンが転倒したものである。 災害発生当日は、あらかじめ立てられた支柱に防音パネルを取り付ける作業が行われた。1スパン目と2スパン目の取り付け作業が終了し、3スパン目に取りかかる際、3スパン目の支柱間隔が2スパン目までより広かったために、別の場所に積んであった防音パネルをホイールクレーンで作業エリアへ搬入する必要が生じた。 玉掛け者Aは、防音パネル9枚の束(重量1,134kg)を玉掛けし、巻上げを合図した。ホイールクレーンの運転士Bは、地切りを行う際に定格荷重の80%を超過している警告音が鳴ったので、過負荷防止装置を解除した。その後、Bは、ジブを旋回し、徐々に巻き下げと、ジブを倒す操作を行いながら、Aが合図する場所へ近づけていったところ、突然、ホイールクレーンが転倒した。この災害による被災者はいなかった。 ホイールクレーンが転倒したとき、過負荷防止装置は解除されたままであり、そのため、つり荷の重量が定格荷重を超えても自動停止装置が働かない状態であった。 なお、災害が起きた工事現場では、作業者に対し、入構時の安全衛生教育は実施していなかった。 |
原因
この災害の発生原因として、次のようなことが考えられる。 | |
1 | クレーン運転士が過負荷防止装置を解除したまま、ジブを倒す操作を行ったこと Bは、防音パネルを地切りした際、定格荷重の80%を超えた警告音がなったが、まだ安全につり上げられると判断し、過負荷防止装置を解除した。そのまま、クレーン操作を続け、ジブを倒したため、つり荷の重量が定格荷重を超えたが、自動停止機能が働かず、ホイールクレーンが転倒した。 |
2 | 入構時の安全衛生教育が実施されていなかったこと |
対策
同種災害を防止するためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 移動式クレーンの操作中は、過負荷防止装置を解除させないこと 過負荷防止装置は、移動式クレーンの転倒を防止するために設置されている安全装置であり、作業中は過負荷防止装置を決して解除してはならない。また、過負荷防止装置が働いてクレーンが停止した際には、つり荷を小分けにする、ジブの作業半径を小さくする等の安全な作業方法で作業しなおすことを、普段からクレーン運転士に周知徹底することも重要である。 |
2 | 作業者に対する入構時の安全衛生教育を実施すること 新たに入構する作業者に対しては、従事する作業に関する安全衛生教育を行うこと。特に、クレーン運転士、玉掛け者等、クレーン作業に携わる者に対しては、[1]クレーンの定格荷重を超える荷をつってはならいこと、[2]クレーン作業中は過負荷防止装置を解除してはならないこと等のクレーン災害防止のための安全教育を実施することが重要である。 |