移動式クレーンの過負荷防止装置を解除してつり上げようとしたところ補ジブが折れる
業種 | その他 | |||||
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事業場規模 | 1〜4人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 移動式クレーン | |||||
災害の種類(事故の型) | 動作の反動、無理な動作 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 不適当な機械、装置の使用 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 安全装置をはずす、無効にする |
No.101028
発生状況
この災害は、ビル屋上に設置された空調機室外機(重量約3トン)を移動式クレーンでつり上げ、撤去する作業中に発生した。 移動式クレーンの運転士Aは、屋上にいる玉掛け作業者と無線で連絡を取りながら、玉掛け作業者の指示でクレーンのフックを所定の位置に下ろした。このときの荷重計は、定格荷重1.88t、作業半径26mを表示していた。 玉掛けが終了したので、Aが巻上げ操作を行ったところ、過負荷防止装置が作動し、クレーンが停止した。Aは自らの判断で過負荷防止装置を解除し、少しずつ巻上げ操作を行って荷重計が荷重2.7tを表示した時点でいったん、巻上げを停止した。 Aは、玉掛け作業者に地切りしているか確認したが、玉掛け作業者からは地切りしていないとの報告があった。さらに、玉掛け作業者が「つり上げできるのか」と尋ねたところ、Aは「試してみる」と答え、ジブを起伏させながらフックを巻き上げたところ、使用していた補ジブが折れた。この災害による被災者はいなかった。 この工事の発注は、元請のW社から一次下請のX社に行われており、その際作業内容とつり荷の大きさや重さについて口頭で説明が行われた。X社は、移動式クレーンの手配をY社に依頼したが、Y社では指定された大きさの移動式クレーンがなかったため、さらに、Y社から別のZ社に対し移動式クレーンと運転士の手配が依頼された。こうした経緯のため、Z社では、現場の状況や作業内容の把握があいまいなまま移動式クレーンの機種の選定を行った。その結果、作業に必要な能力を有する移動式クレーンが配車されなかった。さらにW社およびX社の現場責任者は、配車された移動式クレーンの能力を確認しないまま、作業を開始させた。 |
原因
災害の発生原因として、次のことが考えられる。 | |
1 | 移動式クレーンの運転士が過負荷防止装置を解除したこと 移動式クレーンの運転士Aは、過負荷防止装置が作動したにもかかわらず、これを解除して作業を継続しようとした。そのため、定格荷重を超える重量がかかり、補ジブが折れた。 |
2 | 作業に必要な能力を有する移動式クレーンが配車されなかったこと 移動式クレーンの手配が全て口頭で行われ、最終的に依頼を受けたZ社では、現場の状況や作業計画の把握があいまいなまま機種を選定し配車した。 |
3 | 現場に配車された移動式クレーンの能力を確認しないまま、作業を開始したこと 元請および一次下請それぞれの現場責任者は配車された移動式クレーンの能力を確認しないまま、作業を開始させた。そのため、能力が不足する移動式クレーンで無理な作業を行うことになった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 過負荷防止装置を解除して作業を行わせないこと 過負荷防止装置等の安全装置を解除して作業を行わないよう、移動式クレーンの運転士に対する安全衛生教育を徹底することが重要である。 |
2 | 移動式クレーンの手配を複数の業者を経て行う場合は、文書で確実に行うこと 工事現場で移動式クレーンを複数の業者を経て手配するときは、現場の状況、作業計画等を検討した上で必要なクレーンの能力を記載した文書で行うことが必要である。 |
3 | 作業前に配車された移動式クレーンの能力を確認すること 現場責任者は、配車された移動式クレーンについて、作業開始前にその能力が作業に必要な条件を満たしていることを確認することが必要である。 |