トラッククレーンでつり上げ作業中、突風で補助ジブが折れ、つり荷が落下
業種 | その他の建設業 | |||||
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事業場規模 | 16〜29人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 移動式クレーン | |||||
災害の種類(事故の型) | 飛来、落下 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事 | ||||
災害の種類 | クレーン等で運搬中のものが飛来・落下 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 作業環境の欠陥(部外の) | |||||
発生要因(人) | 忘却 | |||||
発生要因(管理) | 安全装置の調整を誤る |
No.101025
発生状況
この災害は、建築工事現場において、トラッククレーンでつり上げ作業中に補助ジブが折れ、つり荷が落下したものである。 災害発生当日は、トラッククレーン(つり上げ荷重100t)が現場に設置され、折板と呼ばれる長尺な屋根材をつり上げる作業が行われていた。この折板とは、コイル状の鋼板を現場で折り目を付けて成型した屋根材である。当日は、風が強く、常時、風速8m/秒程度の風が吹いていた。災害が発生したときのつり荷は、長さ36mの折板2枚であり、重量は2枚で460kgであった。つり上げ作業には天秤と呼ばれる長尺物用のつり具(重量720kg)が用いられた。したがって、荷重の合計は1.18tであった。この荷を3m程度つり上げたときに、突風が吹いて補助ジブが折れ曲がり、つり荷が落下した。 災害発生したとき、主ジブの先に補助ジブが取り付けられていたが、クレーンの過負荷防止装置には補助ジブの使用が入力されていなかった。そのため、突風により負荷が増加し、定格総荷重を超えたときに、過負荷防止装置が正常に機能しなかった。 なお、この災害による死傷者はなかった。 |
原因
この災害の原因として、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 突風により過荷重となったこと 水平に吊られた折板が風によって傾き、風荷重の鉛直分力を増加させた。特に本災害の例では、つり荷の折板が36mと長尺であったために、風による荷重増加が大きかった。 |
2 | 過負荷防止装置が正しく設定されていなかったこと 主ブームの先に補助ジブが取り付けられていたにもかかわらず、補助ジブの使用が過負荷防止装置には入力されてなく、誤った設定となっていた。そのため、突風によって荷重が増加した際に、荷重が定格総荷重を上回り、補助ジブの限界強度に到達した。このとき、過負荷装置が正常に機能しなかったために、過荷重となったことを知ることができなかった。 |
3 | 安全な作業方法について、関係労働者に教育されていなかったこと |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 強風時における長尺な荷のつり上げを行わないこと クレーン等安全規則第74条の3では、強風時の作業中止を規定している。規定では強風を10分間の平均風速が10m/秒以上と定義しているが、クレーンの構造や、つり荷の形状等により、風による危険性の程度は異なる。したがって、風による荷の揺れや回転により、危険が労働者に及ぶおそれのあるときは作業を中止しなければならない。特に、定格荷重に近い質量の荷をつり上げる作業では、風圧による荷の動揺が作業半径を増大させ、定格荷重を超える場合があるので注意が必要である。 |
2 | 過負荷防止装置には正しい作業条件を入力すること 大型機械を安定させた状態で操作するためには、人間の感覚のみでは困難である。安全な操作を行うために、過負荷防止装置には正しい作業条件を入力するなど、安全装置を正常な状態で機能させることが重要である。 |
3 | 安全な作業方法について、関係労働者に教育すること クレーン作業を行う際の風による危険、過負荷防止装置の使用等、安全な作業方法について、関係労働者に教育を行うことが必要である。 |