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労働災害事例

橋梁架設工事で架設桁がバランスを失い谷に落下し、桁をつっていたホイールクレーンが引き込まれ運転者が被災

橋梁架設工事で架設桁がバランスを失い谷に落下し、桁をつっていたホイールクレーンが引き込まれ運転者が被災
業種 橋梁建設工事業
事業場規模 30〜99人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 仮設物、建築物、構築物等
災害の種類(事故の型) 墜落、転落
建設業のみ 工事の種類 橋梁建設工事
災害の種類 クレーン等(エレベータ、リフトを除く)から墜落
被害者数
死亡者数:0人 休業者数:1人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物) 物の積み方、置き方の欠陥
発生要因(人) 分類不能
発生要因(管理) その他

No.101020

発生状況

 本災害は、農道新設工事に伴う架設桁架設工法によるPC橋(橋長116m、3スパン)架設工事において発生した。
 災害発生当日は、PC桁を設置するための架設桁の組立て作業を行っていた。
災害発生時は、手延べ桁3本(30m)と架設桁本体ブロック(1本7m)を2本目まで組立ていた。その全長は44m、全重量は21.5tであった。
  組立の作業スペースが橋台と橋台との間の狭い範囲に限られていたため、架設桁の1ブロックを継ぐたびに新たに取扱い部材分の作業区域を確保する必要があった。本体ブロック3本目の組立て時点では、既に空中に手延べ部分が張り出し、架設桁の重心が取りにくくなっていた。そのため、ホイールクレーン(つり上げ荷重45t)で架設桁の後端をつって傾けながら、レバーブロックを使用して約30cm谷側へ動かしたところ、突然、架設桁が滑り始め、後端を浮かせて谷へと転落した。この時、架設桁の端をつっていたホイールクレーンは、架設桁に引き込まれて前方へ転倒し、ジブを支えにして倒立した。その際、ホイールクレーンの運転をしていた作業者は、転倒を始めたホイールクレーンから飛び出し、負傷したものである。
  架設桁の移動は、作業前に計算された重心位置をもとにぎりぎりの位置まで行われた。また、移動中は作業の振動や風によりバランスを失うことを想定した監視は行われていなかった。さらに、実際の重心位置は後端をつり上げることにより計算よりも前方(谷側)にあった。
  なお、本工事の計画段階では、工法の安全性などについての事前審査は行われていなかった。

原因

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1  架設桁の重心が計算結果よりもずれていたが、計算結果のみに頼って作業したこと
 架設桁の後端をホイールクレーンでつり上げていたため、架設桁後部の重量が軽減され、その分だけ重心が計算結果よりも前方にかたよっていた。
 さらに、架設桁を計算結果のみに頼って不安定になる直前まで移動し、振動や風の影響の検討や移動中の監視を行っていなかった。
2  計画段階で工事の安全性の評価が行われていなかったこと
 この工事では、元々作業スペースが狭く作業方法の制約が大きかったにもかかわらず、工事の計画段階において工法などの安全性についての事前評価(セーフティ・アセスメント)が行われていなかった。

対策

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1  架設桁の転倒防止や逸走防止の措置を講じること
 架設桁を移動するときには、ワイヤー等で転倒防止や逸走防止の措置を講じる等、工法に応じた安全な作業方法を定めて、これに従って作業する。特に安全を軽視した作業や安全率がぎりぎりとなるような作業を行わないことが重要である。
2  施工計画は、安全性の事前評価(セーフティ・アセスメント)を実施して決定すること
 橋梁の工事については、その計画段階において、工法および作業の安全性について事前評価を確実に実施することが必要である。なお、PC橋梁の架設工事については、厚生労働省指針(昭和63年基発第136号)を参考にすること。本災害のように、狭い土地のため特殊な作業方法を取らざるを得ない場合は、特に十分な事前評価が必要である。