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労働災害事例

印刷工場において修理作業中、フィルムの張り付け機のフィルム押さえアームにはさまれ死亡

印刷工場において修理作業中、フィルムの張り付け機のフィルム押さえアームにはさまれ死亡
業種 印刷業
事業場規模 300〜999人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 印刷用機械
災害の種類(事故の型) はさまれ、巻き込まれ
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:−
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物) 設計不良
発生要因(人) 危険感覚
発生要因(管理) 安全装置をはずす、無効にする

No.101010

発生状況

 この災害は、印刷工場のフィルム張り合わせ工程において、作業者が昼休み中に単独でフィルム張り合わせ機械の点検を行っていた際に下降してきたフィルムを押さえるためのアームとロールの間にはさまれ被災したものである。
 災害発生当日、被災者は、連続してフィルムを張り合わせる午前中の作業を同僚とともに行っていた。昼休みが近づき、通常どおり最後の張り合わせフイルムを自動運転にセットし、被災者と同僚の作業者は昼食に入った。その後、昼食を終えた被災者は、機械のトラブルに気づき、機械を停止した状態で修理作業を単独で行った。同作業を終えた被災者は、機械を元の状態に戻し、上げてあったフィルム押さえのアームを元の状態に戻そうとリセットボタンを押した。その際に修理箇所の下にポリタンクが置いてあることに気づきこれを取ろうと手を伸ばしたところ、体が起動スイッチに触れ、少し間をおいてアームが下降した。被災者はこのアームに体をはさまれた。
 フィルム張り合わせ機械には、フィルム押さえアームが上がった状態では機械が停止するような安全装置が設置してあった。しかし災害発生時には、この装置が作動しないように木片がはさんであった。また、起動スイッチは、通常、停止スイッチに用いられるような突出した形のものであった。
 なお、災害が発生した機械の修理・点検作業については作業手順書がなく、安全衛生教育も実施されていなかった。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1  安全装置の機能を失わせていたこと
 作業者が身体の一部を機械の駆動部に入れた際、または誤って立ち入った際に自動的に装置が停止し、電源が切れるような安全装置が設置されていたが、その機能を失わせて作業していた。
2  起動スイッチが突出した形であったこと
 機械の起動スイッチが埋頭形のものではなく、作業者の体の一部がスイッチに触れた際に突発的に起動してしまう突出タイプのものであったこと。このため、被災者は機械の点検作業をしている際に誤って起動スイッチに触れ、機械を起動してしまった。
3  監視人をおかず、点検作業を単独で行っていたこと
4  作業手順書がなかったこと
 修理・点検時の処理手順等については作業手順書が定められていなかった。
5  当該機械に関して安全衛生教育が行われていなかったこと
 当該機械は作業時に巻き込まれによる労働災害が発生する可能性があることなどについてあらかじめ教育がなされていなかった。

対策

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1  安全装置の適正な使用
 機械に取り付けられている安全装置は、その機能を失わせないで使用すること。また、職場の管理者や監督者が安全装置が適切に使用されている状況を適宜、確認することも重要である。
2  起動スイッチの形状の改善
 突発的な起動により災害のおそれがある動力機械については、作業者が誤って起動スイッチに触れないようにスイッチを埋頭形のものとすること。また、起動スイッチだけではなく、運転キー等との併用により安全に起動できるようにすることも重要である。
3  監視人の配置
 修理・点検等の非定常作業においては、突発的な事態に備えて複数の作業者で作業を行う、又は他の作業者が当該作業を監視できる体制とすること。 
4  作業手順書の作成
 非定常時の作業についても作業手順書を作成し、これに基づき作業を行うこと。特に安全確保の観点から想定される異常事態、起こりうる危険な状態について対策を検討し、その内容については明確に作業手順書の中に記載する。
5  安全衛生教育
 作業者には事前に作業手順書の内容について教育を行うこと。また、特に予想される異常事態、危険等についても教育を行うとともに、安全装置等については実地に取扱い方法についても教育を行うこと。