印刷工場において、ためし刷りを行っていた作業者が印刷機にはさまれ死亡
業種 | 印刷業 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 印刷用機械 | |||||
災害の種類(事故の型) | はさまれ、巻き込まれ | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 安全装置をはずす、無効にする |
No.101009
発生状況
この災害は、印刷工場において、ためし刷り中に作業者が印刷機に巻き込まれ被災したものである。 災害発生当日、作業者Aは、作業者Bとともに印刷開始作業前の印刷機の調整作業を行っていた。ためし刷りを行ったところ排紙部分に風を吹き付ける方式の紙押さえの調節がうまくいかず、紙が舞い上がってしまった。このためBは印刷機を止め、Aとともに紙押さえの風量の調節を行うとともに機器の周囲に飛び散った紙の回収を行った。その後、Aは集められた紙を専用の紙置き場の方へと運び、Bは印刷機の起動ブザーを鳴らし、印刷機を起動させた。しばらくして、Bは紙押さえの状況を確認するため排紙部分に行ったところ、Aが排紙機のカバーとロールの間にはさまれているのを発見した。 同印刷機はカバーが開いている状態では機械が作動しないようにリミットスイッチが設置されていたが、災害発生時はこれにガムテープが巻かれ作動しないようになっていた。ガムテープの使用については、以前、工場の安全衛生委員会で議論され、いったんは取り除かれていたが、再びガムテープが使用されていたことを安全衛生委員会によるパトロールでも見逃していた。 また、ためし刷り作業についての作業手順書はなく、二人作業の役割分担や再起動の方法について作業者同士による打合せもなかった。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 印刷機に設置された安全装置が作動しないようにしていたこと 本印刷機は、安全カバーが開いている時にはリミットスイッチが作動してライン全体が停止するようになっていた。当機を運転する時には安全カバーを閉じ、リセットスイッチを押すことにより運転することができる構造となっていた。しかし、災害発生時にはリミットスイッチにガムテープが巻かれて作動しない状態であった。 |
2 | 安全管理体制が適切に機能していなかったこと リミットスイッチについては以前からガムテープ使用が工場の安全衛生委員会で問題となり、いったんはガムテープが取り除かれたが再びガムテープが使用されていた。しかし、これについては安全衛生パトロールでも確認を怠るなど、事実上放置されていた。 |
3 | 適切な作業手順書がなかったこと 災害が発生したためし刷り作業は通常の作業であり、印刷用紙が散らばることはよくあることであった。しかし、どのような手順で作業を行うか作業手順書に手順が定められていなかった。 |
4 | 連絡体制に不備があったこと 二人作業における役割分担や再起動時の安全確認について、作業者間の十分な打合せがなく、お互いに何をしているのかを把握していなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 安全装置の適正な使用 作業者が接触するおそれのある回転部分を有する動力機械については、作業者が回転部分に接触しないよう回転部分に覆い、蓋等を設け、これらが開放された際に自動的に停止するための安全装置を設置することが必要である。本印刷機には、このような安全装置が設置されていたのでこれを適正に使用すること。 |
2 | 安全管理体制の整備 以前に改善が行われた個所がその状態を保っているか、作業者に危険を及ぼす個所がないかについて、安全衛生委員会によるパトロールはもとより、職場の管理者や監督者も日頃から確認を行うこと。 |
3 | 作業手順書の作成 作業場における各種作業に関しては、作業手順書を作成し、これに基づき作業を行うこと。特に安全確保の観点から想定される異常事態、起こりうる危険な状態について対策を検討し、その内容については明確に作業手順書の中に記載すること。 |
4 | 連絡体制の整備 日常の作業においては作業前にその日の作業等について関係者間で打ち合わせ・確認を行うなどコミュニケーションを図ること。また、異常事態発生時の連絡・確認体制についてもこれを書面で作成し、関係者に周知すること。 |