トラック製造工場において自動搬送装置の点検中に動きはじめた装置にはさまれ死亡
業種 | 自動車・同付属品製造業 | |||||
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事業場規模 | 1000人以上 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | コンベヤー | |||||
災害の種類(事故の型) | はさまれ、巻き込まれ | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.101007
発生状況
この災害は、トラック製造工場の部品自動運搬ラインにおいて柵の内側で点検作業をしていた作業者が背後から低速度で移動してきた搬送装置と柵の支柱の間にはさまれ死亡したものである。 被災者は、トラックの部品の加工、搬送を行う装置を取り扱うラインの責任者であった。同ラインは、トラック等大型自動車のエンジンブロックを製造するラインであった。 同ラインは製品の製造を3段階に分けて行うもので、それぞれの段階で自動的に製品の検査、搬入、加工、搬出を自動的に行い約30分かけて製品を仕上げるものであった。 災害発生当日、被災者達は通常通り午後8時から自動加工運搬ラインの操業を続けていた。その後深夜12時を過ぎた頃に運搬ラインが停止したため、被災者はラインの関係労働者とともにライン各所の点検を行った。被災者は同僚とライン上の各運搬機のリミットスイッチを点検したところ、リミットスイッチに加工の際に発生する切り粉がかぶっているのが見つかった。被災者が切り粉を除去したところ停止している運搬装置が動き始めた。このあと、被災者はライン全体を復帰させるために操作盤のある場所へと向かった。 その後、同僚はラインが復旧するのをしばらく待ったが動かないのを不審に思い操作盤のある場所へと向かったところ被災者が搬送装置のエンジンブロックと柵の支柱の間にはさまれているのを発見した。 被災箇所には立入禁止の柵が設置されていたが災害発生時にはこれが開放され、被災者は柵の内側にいたことがその後判明した。 また、同運搬ラインのトラブル復旧を想定した作業手順書はなく、さらに、トラブル復旧の作業体制や手順を含めた同ラインの作業についての安全衛生教育も実施されていなかった。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 搬送装置それぞれが自動的に運転・停止を繰り返す構造になっていたこと |
2 | 個々の搬送装置に取り付けられた安全装置が適切なものでなかったこと 搬送装置の移動速度は遅いが、力が強く、はさまれによる危険があるにもかかわらず、作業者に接近したときに停止する装置や音、照明等による警報装置は設置されていなかったこと。 |
3 | 立ち入り禁止の柵が設けられていたが、柵そのものが開放されたときに搬送装置が停止する等の機能がなかったこと |
4 | 自動運搬ラインにおけるトラブル復旧作業について、安全面に配慮した作業手順書がなかったこと |
5 | 自動運搬ラインに関して安全衛生教育が行われていなかったこと 柵内で行われる点検などの作業時に搬送装置に作業者が接触して起きる災害が発生する可能性があること、トラブル復旧時に作業体制と手順を確認することなどについて、あらかじめ教育がなされていなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 運搬ラインは全体が非常停止するような構造とすること。他所の復旧に伴なって安全確認のないまま個々の搬送装置が独自に動く構造のものとしないこと。 |
2 | 個々の搬送装置に設置する安全装置は作業者が近づきすぎた場合には速やかに停止するように設定すること。また、搬送装置が近づくことを音、照明等で知らせるような装置も併せて設置すること。 |
3 | 立ち入り禁止の柵はその理由を問わず開放されたときにはライン全体が停止するような構造とすること。 |
4 | ラインにおけるトラブル復旧作業等、非定常作業についても安全面に配慮した作業手順書を作成し、関係者に周知するとともに作業場の見やすい場所に掲示すること。 |
5 | 搬送装置に関して安全衛生教育を徹底すること 当該装置は低速で運転時に巻き込まれによる危険性があることなどについてあらかじめ教育を行うこと。また、搬送ロボット等による過去の災害事例についても教育を行うこと。 |