厚紙加工工場で厚紙打ち抜き作業を行っていた作業者が頭部及び右腕を紙打ち抜き機にはさまれ死亡
業種 | 紙加工品製造業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | シャー | |||||
災害の種類(事故の型) | はさまれ、巻き込まれ | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 防護・安全装置が不完全 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 安全装置をはずす、無効にする |
No.101004
発生状況
この災害は、被災者が単独で紙加工工場の紙打ち抜き機により厚紙の打ち抜き作業を行っていた際に発生したものである。 災害発生当日、単独で被災者は前日から開始した厚紙の打ち抜き作業を厚紙用の抜圧40トンの紙打ち抜き機で行っていた。この作業は毎分28回のストローク数で、1回に2枚の厚紙を打ち抜き機の面盤にセットし、約2秒後に面盤が閉鎖、打ち抜きが終了した厚紙を左手で取り出すと同時に右手で新たな厚紙を面盤にセットするというものであった。このとき、打ち抜き機はタイマー設定により連続運転されていた。被災者はこの手順ですでに前日夕方に30分ほど作業を行っていた。 災害当日、被災者は朝から同じ手順で作業を再開してまもなく、打ち抜き機の面盤の隙間に(58センチ)に厚紙を落としたため身を乗り出し右手でこれを抜き取ろうとした。しかし、この間に予めセットされたタイマーにより面盤が閉まり面盤の間に体の一部をはさまれたものである。 なお、当該打ち抜き機は通常使用時、厚紙を面盤の間にセットする際に面盤間に手を入れる必要があるため、購入当初は安全装置としてコの字型の鋼鉄製安全棒が設置されていたが、災害発生時には取り外されていた。 また、厚紙打ち抜き作業の作業手順書は作成されておらず、作業者に対する安全教育も行われていなかった。被災者は入社後9ヶ月経っており、通常、作業は他の作業者の目の届かない場所で行うことが多かった。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 適切な安全装置が設置されていなかったこと 当該打ち抜き機は厚紙をセットする際に面盤間に手を入れる必要があるため、購入当初は安全装置としてコの字型の鋼鉄製安全棒が設置されていたが、災害発生時には取り外されていた。 |
2 | 当該作業に関して作業手順書がなかったこと 当該作業に関しては災害発生前日に開始した作業であり、ストローク数と打ち抜く厚紙の枚数を設定していたが、打ち抜き装置の運転速度及び一度に打ち抜き枚数については作業毎に設定していた。 |
3 | 当該作業に関して安全衛生教育が行われていなかったこと 当該装置は作業中に打ち抜き面が2秒に1回開閉するものであり、作業時にはさまれた場合には身体の滅失等を伴う可能性があることなどについてあらかじめ教育がなされていなかった。 |
4 | 連絡体制に不備があったこと 関係者の事前の打ち合わせ及びコミュニケーションが不足していた。このため被災者の作業内容等についても関係者がこれを細かく把握しておらずこれが災害につながった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 適切な安全装置の設置 災害の発生した厚紙打ち抜き機は大きな力で厚紙を打ち抜く危険な装置であることから、基本的には身体の一部を打ち抜き面に入れて作業を行えないように、厚紙の自動供給・排出装置を設置すること。また、この場合においても誤って作業者が危険範囲内に身体を差し入れた場合を想定し、光電管スイッチ等を備えた非常停止装置等を設置すること。 |
2 | 当該作業に関して作業手順書がなかったこと。 災害の発生した打ち抜き機は危険を伴うものであることから、作業の変更等に関する作業手順書を作成すること。また、作業手順書は作業場の見やすい場所に掲示すること。 |
3 | 適切な安全衛生教育の実施 作業手順書の内容に関しては作業者をはじめ関係者に幅広く周知する。機械・装置を使用するものについては実際に当該機器・装置を用いて安全装置の仕組み等についても教育を行うこと。特にプレス、シャー等の装置については災害が発生した際の重篤性等についても安全衛生教育の際に強調すること。 |
4 | 連絡体制に不備があったこと 機械のトラブル等に備え、関係者の事前の打ち合わせ及びコミュニケーションを徹底するとともに連絡体制を構築すること。 |