転炉工場内で予熱装置を解体中に予熱装置が倒れ、その下敷きとなり死亡
業種 | 非鉄金属精練・圧延業 | |||||
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事業場規模 | 300〜999人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 仮設物、建築物、構築物等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 崩壊、倒壊 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 作業箇所の間隔空間の不足 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | その他防護物をなくする |
No.100966
発生状況
この災害は、転炉工場内において下請け業者が予熱装置を解体している時に、この予熱装置が突然倒れ、ガス漏れの点検にきていた発注元企業の作業者がその下敷きとなり、死亡したものである。 災害発生当日、工事関係者(下請け業者)は朝のミーティングで予熱装置の解体作業について作業分担を確認した。この際、被災者は発注元企業の社員であったがこの作業とは直接関係がなかったためミーティングには参加していなかった。予熱装置の解体作業を始めてまもなく、下請け業者の作業者は予熱装置の下部の床から出ているパイプからガスが漏れていることに気づき、元請け企業の工事責任者に連絡したところ、工事責任者からガス漏れしている施設についてはそのままにしておくよう指示を受けた。下請け業者は予熱装置の解体作業については予定通り続行した。 下請け業者の作業者は予熱装置の脚部の溶断を開始した。その後まもなく発注元企業の社員である被災者がパイプからガス漏れの状況を確認するため、予熱装置の解体現場に到着した。被災者はガス漏れの事実を確認した後、床下のガスの元栓を締めに行き、引き続きガスの漏れていたパイプの所までガスが止まったかどうか確認に行った。このとき予熱装置の脚部の溶断作業はほぼ終了していたが溶断作業を行っていた下請け業者の作業者は被災者が作業場所近くに来ていることに気づかず溶断作業を続けた。この直後、最後の溶断部分が切断され予熱装置は倒壊した。この時、床に伏せてガス漏れの確認をしていた被災者が倒れてきた予熱装置の下敷きとなった。 その後、被災者は救助されたが搬送先の病院で死亡した。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 被災者は災害発生当日、予熱装置の解体作業とはまったく異なる作業を行う予定であり、災害発生現場で行われていた作業についてはほとんど理解していなかったこと。 |
2 | 予熱装置の解体を依頼された下請け業者の作業者はガス漏れに伴い作業を一時中断するようには直接指示は受けていなかった。したがって被災者が点検作業を続けている間も引き続き予熱装置の溶断作業を行ったこと。 |
3 | 予熱装置の解体作業で脚部の溶断終了後、倒壊しないような措置が講じられていなかったこと。この結果、予熱装置が溶断中、極めて不安定な状態となり倒壊したこと。 |
4 | 本災害においては、発注元、元請、下請け、2次下請けの4企業が予熱装置の解体作業にかかわっていたが、ガス漏れ等の不測の事態がおきた場合の手順が定められていなかったこと。このため、現場に出入りする予定がなかった被災者が災害に巻き込まれる事態となったこと。 |
5 | 予熱装置解体工事全体の作業を監督する者の役割がはっきりしていなかったこと。 |
6 | 予熱装置の解体作業場所等、危険個所への立ち入り制限がなされていなかったこと。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 作業現場で予熱装置の解体作業等、非定常作業が行われる場合には、作業に先立ち関係者に対しその作業内容及び安全上の注意点等を周知すること。 |
2 | 非定常作業を行う場合には作業の一時中断の指示等に関して指示命令系統をはっきりさせておくこと。また、指示は確実に行うとともに、指示の結果とられた対応についても確認すること。 |
3 | 予熱装置の解体を行う場合、脚部の溶断終了後、倒壊しないような措置を講じること。具体的には予熱装置本体をチェーンブロックでつり上げる等の措置が考えられる。 |
4 | 本災害のように、発注元、元請、下請け、2次下請けの4企業が関連する作業においては作業手順を文書で定めること。関係者全員がその内容を確認するとともに、安全対策等については安全協議会等を設置してその内容を検討すること。 |
5 | 工事全体の作業を監督する者を選任し、その者が責任をもって作業の指示を行うこと。 |
6 | 予熱装置の解体作業場所等、危険個所への立ち入り制限を確実に行うこと。また、作業場内の騒音等を考慮し立ち入り制限に際しては表示等も検討すること。 |