はしけから輸送船にウインチで鋼管を積み込む作業を行っていた作業者が鋼管とはしけの船倉壁にはさまれ死亡
業種 | 港湾運送業 | |||||
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事業場規模 | 100〜299人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 金属材料 | |||||
災害の種類(事故の型) | 激突され | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 作業箇所の間隔空間の不足 | |||||
発生要因(人) | チームワーク | |||||
発生要因(管理) | 合図なしに物を動かし又は放す |
No.100963
発生状況
この災害は、輸出用の鋼管パイプをはしけから輸送船の船倉にウインチを用いて積み込む作業を行っていた際に、被災者がはしけの船倉の壁と鋼管パイプの間にはさまれ被災したものである。 災害発生当日の朝、作業に当たる作業者全員が集まり体操とミーティングを行った後、それぞれの現場に向かった。はしけは既に2隻到着しており被災者はそのうちの1隻に乗り込み作業を開始した。その後作業が進み、はしけ内の鋼管パイプが少なくなり、積み込む鋼管の位置がウインチの作業半径外になった。このため被災者の乗り込むはしけの作業主任者はパイプをウインチで作業半径内まで引きずり、玉掛けが可能となった後につり上げる作業方法に変更した。まず最初に残り4本となった鋼管のうち2本についてウインチで引きずり、その後玉掛けをし直して本船上に積み込んだ。続いて残りの2本について同様にウインチで作業半径内まで引きずっていたときに被災者のうめき声を他の作業者が聞いた。被災者の立っていた方向を見たところ被災者が倒れこむのを目撃した。近くで作業をしていた他の作業者はすぐに被災者の元に駆け寄り被災者の救助を行った。被災者はその後救助され、駆けつけた救急車により病院に搬送されたが、まもなく死亡が確認された。 なお、被災者が退避していた場所は同僚から見えにくい場所であり、本船上のウインチマンからはまったく見えない箇所であった。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | ウインチマンをはじめ、鋼管パイプの船積みを行っていた他の作業者の作業位置の安全確認が十分ではなかったこと。特に本船上のウインチマンからは、被災者がはしけの側壁に完全に隠れる死角となっていたこと。また、災害の起きた作業では荷である鋼管パイプを地切り後に回転させることとなっていたが回転時の安全確認が行われていなかったこと。 |
2 | 作業全体を指揮する監督者が作業者全員の作業位置を確認していなかったこと。 |
3 | 作業時の退避場所等の位置については作業者各人にまかされており、本災害の場合これが適切ではなかったこと。 |
4 | 作業途中で作業手順を変更していたが、その手順について作業者などの関係者が十分に理解していなかったこと。また、これらの作業については文書化されていなかったこと。 |
5 | 荷をつり上げ移動する時には玉掛け責任者が荷の進路から作業者が退避しているかどうかの確認を行うこととされていたが地切り直後についてはこの確認を行うこととはされていなかったこと。 |
6 | 他の作業者は複数でお互いの作業状況を確認しあっていたが、被災者は単独で作業を行っていたために他の作業者が異常事態発生時に応援するなどの体制が整っていなかったこと。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 船上等、ゆれが予想される作業場所における、荷のつり上げ、つり下げの場合には、荷の不意の揺れ、回転によってはさまれる可能性のある場所に立ち入らないように作業標準を定め、これを関係者全員に周知徹底すること。 |
2 | 荷の船積みを行う際には、本船上のウインチマン、玉掛け作業者及びその他の作業者全員が作業時の安全確認を確実に行うこと。 |
3 | 鋼管パイプ等を地切り後に回転させる場合には回転時の安全確認を確実に行うこと。 |
4 | 本作業のように複数の作業場所において同時進行で作業が進む場合には、作業全体を指揮する監督者を選任すること。監督者は、作業者の作業位置を常時確認すること。また作業時の退避場所等作業者の位置についても確認を行うこと。 |
5 | 作業途中で作業手順を変更する場合には、その手順について安全管理面での問題点等について洗い出しを行い、必要に応じて作業手順の見直しを行うこと。 |
6 | 荷の移動開始時には玉掛け責任者が荷の進路から作業者が安全な場所に退避しているかどうかの確認を確実に行うこと。また、荷の移動経路に死角を作らないようにあらかじめ現場の点検を行うこと。 |
7 | 危険な作業を行う場合には、近傍で作業する他の作業者の作業状況をお互いに確認すること。また当該作業者らに変更した作業の内容について周知徹底すること。 |