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労働災害事例

木材工場でパルプ用チップ材をトラックに積み込み中、崩壊したチップに埋まり死亡

木材工場でパルプ用チップ材をトラックに積み込み中、崩壊したチップに埋まり死亡
業種 一般貨物自動車運送業
事業場規模 30〜99人
機械設備・有害物質の種類(起因物) その他の材料
災害の種類(事故の型) 崩壊、倒壊
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:−
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物) 防護・安全装置がない
発生要因(人) 無意識行動
発生要因(管理) 不意の危険に対する措置の不履行

No.100942

発生状況

 この災害は、木材工場でパルプ用チップ材をトラックに積み込む作業で発生したものである。
 災害発生の3日前、木材会社では、会社のサイロいっぱいに木材チップが堆積しているのを確認したので、いつも製紙会社まで運搬している運送会社に取りに来るよう電話した。
 電話連絡を受けた運送会社では、運行指示に使用している黒板に災害発生当日に木材会社に引き取りに行くよう記入した。これを見た被災者は、木材会社に当日の早朝、トラック(積載質量13t)で到着してサイロ(高さ3.2m、幅4.8m、奥行き8mのもので、4mの高床式)から木材チップを積んで、一度、製紙会社まで運搬した。引き続き次の運搬を行うため、再び木材会社に引き返して午前10時頃から木材チップの積み込みを開始した。
 午前11時50分頃、木材会社の作業者Aが、サイロの下にトラックが停めてあったので近づいて見たところ、トラックにチップが満載されていてエンジンが掛かったままであった。しかし被災者の姿が見えなかったので、サイロの中を見たが人の気配がなく、次に休憩所に行って見たがそこにもいなかった。ちょうど昼時なので、昼食のためどこかへ行ったものと思い、Aは昼食のため現場を離れた。
 午後0時40分頃、木材会社の作業者Bが、サイロの下にトラックが止まったままで、エンジンが掛かっているので不審に思い、トラックを前進させてサイロの下からサイロを見上げた。すると、落し口の隙間からサイロ内で倒れている被災者を発見した。

原因

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 チップを掻き出し作業中にサイロ内のチップが崩壊したこと
 通常、サイロからトラックに木材チップを積み込む手順は、次のようになっている。トラックの荷台をサイロの下に停車させる。⇒トラックのキャブ側面のはしごを使用してフォークを持ってキャブ上に登る。⇒キャブの上からサイロの建物に取り付けられているはしごに乗り移り、サイロの出入口(地上からの高さが約5m)まで登る。⇒出入口のドアを開けて、ドア付近に溜まっているチップをフォークでサイロの外に掻き落とす。⇒ドアから奥にかけて長さ1.1m、幅20〜30cmの床板が敷き詰められているので、それを外してサイロの中に入りフォークでチップをトラックの荷台に掻き落とす。⇒荷台にチップがたまったならトラックを少し移動させて、同じようにフォークでチップをトラックの荷台に掻き落とす。⇒荷台全体にチップがいっぱいになったなら、目的地に配送する。
 被災者はこの一連の手順のうち、床板を外してサイロの中に入ってフォークでチップを掻き落しているときに、チップの山が崩壊しそれに埋まったものである。
2 安全作業手順が定められていなかったこと
 サイロからトラックにチップを安全に積み込む手順は、木材会社でも運送会社でも定めておらず、チップを運搬するトラックの運転者に任せ切りであった。

対策

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 サイロ内での作業は禁止すること
 ホッパー又はずりびんの内部、その他土砂等に埋没すること等により作業者に危険を及ぼすおそれのある場所(サイロ内も含む)等での作業は禁止する。(安衛則第532条の2)
 なお、やむを得ず内部に入って作業を行わせるときには、作業者に安全帯を使用させる等の危険防止措置を講ずる。
2 サイロのチップの落し口の構造を変更すること
 サイロ内の木材チップは、崩壊危険があるほか酸素欠乏危険もある。トラックへの積み込み作業はサイロの中に入ることなく、外部から落し口の遠隔操作ができるような構造に改造する。
 また、サイロ建物に取り付けてあるドアのところに行くためのはしごは、トラックのキャブの上からではなく、地上から直接、登れる構造のものとする。
3 作業手順を明確に定めること
 運送会社は、木材チップをサイロからトラックに積み込む作業について、サイロの所有者である木材会社と十分に打ち合わせて安全作業手順を定め、関係作業者に周知徹底する。
4 安全衛生管理等を行うこと
 運送業務を請け負った会社の経営責任者は、作業者が作業を行う現場に赴いて作業関連設備等の安全性、作業の危険性等を確認し、必要な安全衛生対策を発注者と打ち合わせる。また随時作業実態を確認する。
 また、発注者は、あらかじめ関係会社に使用させる設備の安全性について検討のうえ、現場に出入りする関係会社の作業者の作業等のチェック体制を整備する。