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労働災害事例

古紙再生プラントの新設工事で水路にマンホールの取付中サイロに転落し、死亡

古紙再生プラントの新設工事で水路にマンホールの取付中サイロに転落し、死亡
業種 機械器具設置工事業
事業場規模 16〜29人
機械設備・有害物質の種類(起因物) その他の装置、設備
災害の種類(事故の型) 墜落、転落
建設業のみ 工事の種類 機械器具設置工事
災害の種類 坑、ピットへ墜落
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:−
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物) 作業手順の誤り
発生要因(人) 無意識行動
発生要因(管理) 不意の危険に対する措置の不履行

No.100929

発生状況

 この災害は、古紙再生プラントの新設工事において発生したものである。
 この古紙再生プラントは、環境団体が新聞紙等の古紙からパルプを再生するために設置するものであった。工事全体は躯体工事、製缶工事、電気工事、その他の設備工事に分かれていた。被災者の所属する会社はこのうち製缶工事を担当し、沈殿槽、水路、スクリュープレス・廃プラスチック選別機の製作と設置作業を請け負った。
 当日、被災者は、同僚と二人で午前8時頃、現場に到着し、お互いの作業内容を確認したのち作業に着手した。
 午前中は、二人で水路(ステンレス製で断面が300cm×126cmの箱型)のマンホール設置箇所にガス溶断機で丸く穴を開け、そこにマンホールの台座を設置して外周をアーク溶接により仮付けする作業を行った。
 午後は、分かれて作業を行い、被災者は、アーク溶接によりマンホールの本溶接を担当し、同僚は前日に仮付けした水路のドレン管の本溶接を行った。午後3時から30分ほど二人で休憩し、また作業を続けた。
 午後5時頃、同僚は、自分の作業が終了したので、現場から引き上げようとして被災者の作業箇所に行ったが見当たらなかった。
 そこで、水路の別の箇所に設置されていたマンホールから水路の中に入って被災者を探した。水路につながっているサイロ(ステンレス製の直径350cm、高さ770cmの円筒形)の方に行ったところ、サイロ下に白い影が見えた。サイロの点検用マンホールを開けて見たところ、被災者がサイロ内に倒れていたので、この工事の元請の作業員らとサイロ内に入り、被災者を救出して人工呼吸等を施したが意識は回復せず、死亡した。

原因

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 作業に関係のない場所に立ち入り、転落したこと
 以前、被災者はサイロ関係の作業を行った経験があったので、サイロの構造に興味を抱き、サイロの方に水路内を移動していて、サイロに転落した。
 なお、被災者が溶接作業を行っていた箇所は、マンホール用の穴が開けられていたので200lx程度の明るさがあった。しかし水路とサイロとの接続箇所では0〜1lx程度で周辺がほとんど見えない状態であった。
2 作業計画が明確に定められていなかったこと
 被災者の所属する会社は、受注した水路等をこの現場とは離れている工場で製作し、それを現地で組み立てるため作業員を工場から派遣した。全体の工期等については会社として承知はしていたものの、毎日の作業計画、手順等については作業員に任せ切りであった。
3 元請の統括管理が十分でなかったこと
 この工事現場では、躯体工事を請け負った建設会社が特定元方事業者になっていたが、工期も当初の予定を過ぎて手直し工事や追加の工事を残すのみとなっていた。したがって、朝にミーティングを行ってはいたものの、被災者の作業について特段の指示も行っていなかった。
 なお、被災者と同僚は、当日の朝のミーティングには参加していなかった。

対策

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 作業計画を定め作業管理を行うこと
 自社で製作した機械設備等を設置する場合、製作の段階から機械設備等に詳しい者を据付現場に派遣することも多い。その場合であっても全体の作業計画と合わせて毎日の作業計画・手順を作成し、また、作業の進行状況を定期あるいは随時に報告させる。
 また、現場での作業責任者を指名し、毎日の作業開始前に作業内容、作業手順、作業分担、危害防止に必要な安全帯や保護具の使用等について指示を行わせる。
 なお、作業責任者は、定期あるいは随時に各作業者の作業箇所を巡視し、指示事項の履行状況の把握と必要な指示を行う。
2 安全衛生教育を十分に行うこと
 同種作業の経験が長い者は、その作業に関する知識・技能は優れているものの、危害防止措置等については慣れで省略してしまうことが少なくない。熟練者に対しても、定期あるいは随時に安全衛生に関する教育訓練を実施する。
 また、アーク溶接機を用いて行う溶接、溶断の作業については、特別教育を実施したうえで作業に従事させる。(安衛則第36条第3号)
 なお、古紙再生プラント等で改修作業等を行う場合には、酸素欠乏危険あるいは硫化水素による危険を生ずることがあるので、その場合には作業者に特別教育を行うとともに、環境測定の実施等を行う。(安衛則第36条第26号、安衛法第65条・令第21条第9号)
3 元請は統括安全衛生管理を十分に行うこと
 特定元方事業者は、輻輳した作業が一段落した工事終盤であっても、下請業者を含めた協議組織の設置と運営、作業間の連絡調整、作業場所の巡視等を確実に適切に実施する。(安衛法第30条)