天井裏の空調設備の配線修理中に感電し死亡
業種 | 病院 | |||||
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事業場規模 | 300〜999人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の電気設備 | |||||
災害の種類(事故の型) | 感電 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 不適当な工具、用具の使用 | |||||
発生要因(人) | 無意識行動 | |||||
発生要因(管理) | 不意の危険に対する措置の不履行 |
No.100916
発生状況
この災害は、病院の天井裏で電線の接続作業中に発生したものである。 被災者は、電気技師として同僚とともに病院の施設資材課に所属し、ビル管理会社から派遣されている3名の電気技師とともに病院の機械設備の点検、整備等の作業を行っている。 当日、この病院の病棟看護師から被災者に、ある病室のファンコイルユニット(病室の天井裏に設置された空調設備: 100V、86/100W)が、「電源を切ってもうるさい」との連絡があった。ビル管理会社の責任者はその原因がモーターバルブ(ファンコイルユニットに冷温水を供給する配管を開閉するバルブ)が完全に閉止できずに水が流れて音がするのだと判断した。 そこで、新しいバルブを用意して午前9時40分頃に被災者と責任者は異常のある病室に行った。脚立を立てて天井裏のファンコイルユニットとモーターバルブの位置を確認し、被災者が天井裏に上ってファンコイルユニットの外箱に跨った。 その少し前、責任者は病室内の壁にあるファンコイルユニットのリモートスイッチを「OFF」にした。 午前10時頃、天井裏に上った被災者は、モーターバルブの既設の電線を切断し、切断した電線の端部の絶縁被覆を剥いて接続用のスリーブを差し込み、圧着ペンチで圧着したところ、感電しその場に倒れた。 それを見た責任者は、直ちに被災者を救出し、病院内で蘇生措置が施されたが、約1時間30分後に死亡した。 なお、事故後に調査したところ、圧着スリーブは、圧着ペンチで強く電線に圧着されていたが、被覆部分が破れて芯線が露出していた。 また、被災者の当時の服装は、長袖作業衣(ポリエステル60%、綿40%)、スニーカーで、手は素手であった。 事後に、被災者の感電経路は、右手から胴部を通過して両膝から抜けたものと推定される。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 電源を遮断できなかったこと 被災者が天井裏で圧着スリーブを用いて電線の接続作業を開始する前に、責任者はファンコイルユニットのリモートスイッチを「OFF」にした。しかし元電源を遮断していなかったため、被災者が接続しようとした電線は充電(対地電圧100V)されていた。 なお、この病院では、過去にも同様の作業を行っていたが、他の病室に影響があるという理由で電源を遮断しての作業は行わず、常に活線作業を行っていた。 |
2 | 作業姿勢が不適切であったこと 被災者は、電線の接続作業を天井裏にあるファンコイルユニットの外箱に跨って行っていたが、この外箱は導電性の亜鉛鉄板で作られており、外箱は接地されていた。 そのため、被災者の右手から流入した電流は、身体の中を経由してこの外箱の接地線から大地に流れたものである。 |
3 | 作業工具等が不適切であったこと 被災者が使用していた圧着ペンチは、個人所有のもので圧着部分に絶縁覆いはなく、また、ペンチ使用の際に絶縁用手袋を使用せず素手で作業を行っていた。 |
4 | 安全管理を行っていなかったこと 病院の中央監視室には、病院の職員が被災者を含めて2名、ビル管理会社から派遣されている電気技師3名が常勤していた。その指揮命令系統は明らかではなく、当日の作業もビル管理会社から派遣されている者が指揮する形となっていたなど安全管理を含めた機械設備の管理体制がなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | ||
1 | 修理作業等の方法・手順を定めること 電気による感電(電撃)危険は、高圧(直流にあっては750V、交流にあっては600Vを超える電圧)以上の電圧だけではなく、通常使用される交流100Vの電圧でもある。電気配線の接続作業等を行う場合には、作業の計画の段階で停電作業あるいは活線作業のいずれで行うかをまず定める必要がある。 そのうえで、停電の範囲と開閉器の開放、充電部への接触防止措置、作業者の配置等の作業方法、作業手順を定めることが必要である。 |
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2 | 漏電遮断装置を取り付けた回路とすること 電線の接続等は低圧電路についても停電して行うのが原則であるが、停電することが困難な施設等については、電気回路に感度が良好な漏電遮断装置を取り付けるか、あるいは非接地方式の回路に変更する。(関連:安衛則第333,334条) |
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3 | 絶縁用保護具等を使用させること やむを得ず低圧電路の修理等を活線で行う場合には、作業者に絶縁用保護具を使用させ、又は活線作業用器具を使用させる。(安衛則第346条) また、圧着ペンチ等については、握り部分等が絶縁効力のあるものを使用する。 |
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4 | 安全管理体制の整備等を行うこと 病院等は、機械設備等を停電して作業を行うことが困難な場合も少なくない。安全な作業が行える指揮者の指名等の安全管理体制を整備し、医療部門と施設管理部門の連絡、作業範囲、作業時間、停電時間等を明確にする。 また、低圧の充電された電路の敷設、修理の作業に従事する者に対して、あらかじめ特別教育を実施する。(安衛則第36条第4号) |