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労働災害事例

繊維工場でフォークリフトで繊維束を運搬中近くの「はい」が崩壊し、その下敷となり死亡

繊維工場でフォークリフトで繊維束を運搬中近くの「はい」が崩壊し、その下敷となり死亡
業種 その他の繊維工業
事業場規模 30〜99人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 荷姿の物
災害の種類(事故の型) 崩壊、倒壊
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:−
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物) 物の積み方、置き方の欠陥
発生要因(人) 危険感覚
発生要因(管理) 不意の危険に対する措置の不履行

No.100911

発生状況

 この災害は、繊維工場の倉庫内ではい付け作業中に発生したものである。
 この工場は主として化学繊維製品の製造を行っているが、製造した繊維製品は圧縮してビニール製のバンドで結束したうえビニール製のフィルムを巻きつけて俵状としている。
 製品は、繊維の太さや長さによって異なるが200種類程度ある。一つの梱包(俵)のサイズはおよそ幅80cm、長さ100cm、高さ70cmに統一されており、質量は製品によって異なるが150kg〜200kgとなっている。
 被災者の所属する会社は、この繊維会社の構内協力会社として繊維製造ラインの一部と物流業務を担当している。
 当日、被災者の会社は3連休であった。しかし繊維工場では24時間体制で生産が続けられ、製品が仮置場に貯まるので保管倉庫に運搬しなければならなかった。誰か出勤して倉庫まで運搬してくれないかとの責任者の要請を受け、フォークリフトの運転者である被災者が一人だけ出勤した。
 出勤時刻は、タイムカードによると午前8時となっていた。被災者は、出勤後準備等を行って、所定の勤務時間帯である午前9時からサイドクランプ型フォークリフトで製品の仮置場から保管倉庫に運搬する作業を開始した。午前10時から30分の休憩(他の作業者が目撃している)をとり、作業を再開したものと推定される。
 午前11時30分頃、責任者が作業場を巡視していたところ、倉庫の中でエンジンが掛ったまま誰も乗車していないフォークリフトを見かけた。近寄ってみると、「はい」が付近に散乱しており、その一つの製品の下敷きになって大量の血を流している被災者を発見した。
 その後、被災者は、救急車で病院に移送されたが脳挫傷により約1時間後に死亡した。

原因

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 はい付けしていた「はい」が崩壊したこと
 目撃者はいないが周辺の状況から推定すると、被災者は、倉庫内に積まれていた「はい」の2列目のところにフォークリフトで製品4個を運んできた。フォークリフトのエンジンをかけたまま「はい」の最下段に敷く「りん木」の準備をしていたときに、1列目の6段に積んでいた「はい」が崩壊したものと考えられる。
 なお、会社の基準では、「りん木」を床に敷くのは次にはい付けする製品を運んできてからと定めている。被災者はその手順に沿って作業を進めていたと推定される。
2 はい付け方法が不適切であったこと
 会社の「はい付け」基準では、「はい」は6段とし、1列目の「はい」は支柱から20cm離れた位置におき「はい」がその支柱に寄りかかるように積むこととなっている。この1列目の「はい」は支柱に密着していたことから、「はい」は全体として通路側(2列目)に傾いた状態(支柱側に寄りかからない状態)であったことも想定される。
3 作業内容を明確に指示しなかったこと
 責任者が被災者に当日の作業内容として指示したのは、生産されて仮置されている製品を仮置場から倉庫へ移動させることだけであった。しかし、被災者はサイドクランプ型フォークリフトで製品を倉庫に運び「はい付け」作業まで行っていたものと思われる。

対策

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 作業計画を明確に定め周知徹底すること
 フォークリフト等の車両系運搬機械を使用して作業を行う場合には、作業方法を含む作業計画を明確に定め、関係作業者に周知徹底する。(安衛則第151条の4)
 とくに、一人作業を行う場合には、作業者の私意により作業計画を逸脱した作業を行わないよう管理者は随時に職場を巡視し確認する。
2 はい付け基準の再検討を行うこと
 一つひとつの荷が不安定な形状であるものについては、「はい」の高さを制限する。「はい」の崩壊又は荷の落下により危害を受けるおそれのあるときはロープで縛り、網を張り、くい止めを施すこと等についてはい付け作業基準を見直す。(安衛則第432条)
 なお、りん木を敷く作業は、他のはいに接触する等の危険もあるので、りん木をその都度敷く必要のない床面の構造とする。パレット等の使用についても検討する。
 また、床面からの高さが2m以上のはいの間隔については、隣接するはいとの間隔が10cm以上であることを随時確認する。(安衛則第430条)
3 安全衛生教育を実施すること
 フォークリフトの運転者については、定期あるいは随時に能力向上のための安全衛生教育を実施する。
 今回のように、荷役機械のみで行うはい付け又ははい崩しの作業については、はい作業主任者の選任は義務づけられていない。しかし、フォークリフトの運転者等にもこの技能講習の受講を勧奨し、はい作業の安全について資質の向上を図る。