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労働災害事例

立体駐車場の点検中にリフトが傾いて2名が墜落し死亡

立体駐車場の点検中にリフトが傾いて2名が墜落し死亡
業種 その他の事業
事業場規模 1〜4人
機械設備・有害物質の種類(起因物) エレベータ、リフト
災害の種類(事故の型) 墜落、転落
被害者数
死亡者数:2人 休業者数:−
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物) 整備不良
発生要因(人) 危険感覚
発生要因(管理) 不意の危険に対する措置の不履行

No.100907

発生状況

 この災害は、18階建の立体駐車場の点検作業中に発生したものである。
 当日は監督者A及び作業者B,C,Dの計4名で現場に到着した。作業はB及びCがリフトに乗って昇降しながら点検を行い、A及びDは1階でリフトの作業を行うことになった。
 作業者BとCは、駐車場の上部から下方へ順次点検を行うため、まず、駐車場内のターンテーブル下のピットに格納していたパレット板(1.3m×2.2m)をリフトの南北両側にはめ込んだ。続いて合図により下にいた作業者Dが点検用の単動操作盤(点検の時には自動・手動の切り替え用スイッチボックスを制御盤に接続して作業を行う)にある上昇ボタンを押してリフトを18階まで上昇させた。
 ところが、リフトは、18階付近に到達しても減速せず、そのままリミットスイッチを越えてさらに上昇してリフトのつり金具最上部のスパンボックス(つりチェーンの張力に異常があるとモーターを停止させる装置)に噛み込んだ状態で停止した。
 そこで、リフト上の作業者Bが1階の監督者Aに指示を仰いだところ、リフトを下げるためリミットスイッチのピンを抜くようにとの指示があったのでピンを抜いた。
 同時に、Aが下でリフトを下げる操作を行ったが、リフトは動かなかったのでA自らが復旧作業を行うことになってタラップで18階まで上り、代わりに上にいたBが1階に降りた。
 作業者Bが、1階に到着したときに、上方で「ドーン」という音と続いてガラガラという大きな音がしたのち、監督者Aと作業者Cが1階のターンテーブルの上に落下(約30m)した。
  その後、二人を救急車で病院に移送したが、二人とも死亡した。

原因

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 リフトの操作要領が不適切であったこと
 リフトの上昇速度の調整は制御盤にあるダイヤルで行うことになっていた。しかし、リフトの操作を行った作業者Dは速度調整を制御盤のダイヤルで行なわなかったため、通常より2〜3倍の速い速度(40m/min程度と推定)で上昇し、リミットスイッチを越えてスパンボックスに噛み込んだものと推定される。なお、この操作のときには、監督者Aもその場にいたが特別な指示は行っていなかった。
2 リフトが急激に傾いたこと
 リフトの上に登ったAとCは、スパンボックスに噛み込んだつり金具を工具で叩いて外そうとしたと考えられる。また、このときに1階でリフトを降下させる操作を引き続き行っていた。つり金具が外れたときにリフトをつり下げていたチェーン4本のうち3本がたるんでしまい、足場が急激に大きく傾いて足場の間の開口部(2m×2.5m)から二人が落下したと考えられる。
3 安全な作業のための準備が不十分であったこと
 通常の点検では、パネルを4枚敷き詰めて開口部がない状態で、更に足場周辺に親綱を張り巡らして安全帯を掛けて作業を行うことになっていた。しかし、当日はパネルが2枚しかなく、親綱および安全帯も使用していなかった。
 また、作業のための照明として使用する蛍光灯が、当日は点灯しなかったのでヘッドライトと移動型白熱灯だけで作業を行うなど作業の準備が不十分であった。
4 経験が浅い者を作業に従事させていたこと
 監督者Aは、立体駐車場の点検作業経験は約20年であったが、作業者Bは経験が9か月、作業者Cは経験4か月、作業者Dは経験2か月のアルバイトで、Aを除いては高所での作業等についての経験が浅かった。

対策

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 作業開始前に作業手順等を十分に打ち合わせること
 作業開始前に、作業分担、作業の手順、異常な状態が発生した場合の対処の方法等について、関係者で十分な打ち合わせを行う。
 とくに、作業者の配置・分担を指示するときには、それぞれの技能の程度、安全衛生に関する知識・経験などを勘案して行う。
 また、リフトの機能、安全装置の機能が正常なことを確認のうえ、作業の着手を命ずる。
2 作業用仮設機材等の準備を確実に行うこと
 高所で作業を行う場合には、十分な強度と広さを有する作業床の設置に必要な機材の準備、作業床端部からの墜落を防止するための墜落防止措置に必要な手すり・親綱の準備、安全帯の準備と着帯の確認等を確実に行う。
3 作業者の安全教育を十分に実施すること
 高所で作業を行う作業者については、作業床の設置要領、墜落防止措置の実施方法、安全帯の使用方法、異常な事態が発生した場合の応急処置と避難の方法等についてあらかじめ十分な教育を実施する。
 また、リフトを操作する作業者については、操作手順を定めてそれに基づいた教育訓練を十分に行うとともに、随時に操作状況をチェックする。
 とくに、採用後間もない作業者など十分な教育訓練を実施していない者は、リフト操作や高所での作業に従事させない。
4 元請等との事前の打ち合わせを行うこと
 高所作業に使用する仮設機材等は、発注者あるいは元請が準備するケースが少なくない。作業に着手する前にこれら仮設機材の準備の状況を確認し、不足している場合には充足されるまでの間作業に着手しないことなどを元請等と十分な打ち合わせを行う。
 また、元請等は、支給又は貸与する機器材が準備されていることを確認のうえ、作業の日の指示等を行う。