自動車工場の荷物用エレベーターのワイヤロープが切断し搬器が落下
業種 | 自動車・同付属品製造業 | |||||
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事業場規模 | 1000人以上 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | エレベータ、リフト | |||||
災害の種類(事故の型) | 飛来、落下 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 故障未修理 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 欠陥のある機械、装置、工具、用具等を用いる |
No.100906
発生状況
この事故は、自動車の製造工場において発生したものである。 この工場には、ボディ工場、塗装・樹脂工場、組立工場、エンジン工場の4つがあって、それらの工場を3つのラインで結んで10種の自動車を一日約2,500台生産している。 事故が発生したのはこのうちの組立工場で、当日の午前6時から工場に設置された1台のエレベーターを使用して外部の業者による部品納入が行なわれた。午前6時30分からNo.1ライン、午前7時30分からNo.2ラインでの生産が開始された。 午前9時頃、部品納入業者の作業者が工場の2階で台車(約50kg)、プラスチック製の空容器(約10kg)、ダッシュボードインシュレーターの荷(約150kg)を搬器に積み込み「下降」ボタンを押したところ、エレベーターのドアが閉じ、通常通りに下降を開始した。 つづいて、同作業者は、直前に搬器から降ろした部分が積まれた台車を2階のエレベーターホール前から製造ラインのところに移動させようとした。すると「ドスン」という大きな音がしたので、昇降路の中を覗いてみるとワイヤロープが切断されていて、搬器が1階まで落下していた。 このとき、1階には工場の部品受け入れ担当者もいて、異常に気づいたので電話で上司に連絡し、駆けつけた上司の指示によって1階および2階のエレベーター前をシートで覆って立入り禁止としてエレベーターメーカーに修理を依頼した。 連絡を受けたエレベーターメーカーは、翌日の午前10時頃から事故原因の調査を開始し、その後ワイヤロープの交換等を行った。 なお、事故のあったエレベーターは、荷物用ロープ式(積載荷重1.5t)の簡易リフト(40年前設置)であった。このリフトは、労働安全衛生法(昭和47年)の制定によってエレベーターに該当するものとなったが、経過措置によってエレベーター構造規格を満たすものとして取り扱われていた。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | ワイヤロープに傷があったこと 搬器が落下した直接の原因は、搬器をつり上げているワイヤロープ(6×Fi、11.2mm、4本掛け)が取付けフックのすぐ上で切断したことによるものである。また、ホイストのドラムおよびフックシーブにワイヤーの傷跡があったことから、エレベーターの使用中にワイヤロープにも傷が生じていたものと推定される。 また、搬器が落下したときに非常停止させる装置が取り付けられていたが、ガイドレールとキャッチとの調整が不十分であったため、停止させることができなかった。 なお、エレベーター構造規格によれば、このワイヤロープの安全率は10とする必要があるが、経過措置によって簡易リフトの構造規格でもよいことになっているので、6.3(構造規格では6.0)の安全率となっていた。 |
2 | 点検後の補修を行っていなかったこと このエレベーターは、使用頻度はかなり激しいため毎年のようにワイヤロープの交換等を行っている。しかし、事故直前の月例点検を依頼している業者からワイヤロープの交換等の必要性を指摘されていたのに補修を行わずに使用していた。 |
3 | エレベーターの使用管理が不十分であったこと このエレベーターは、自動車工場が設置し管理しているものであるが、実際に使用するのは部品等を納入している外注業者の作業者であり、エレベーターの性能等に関する情報の提供、操作に関する情報等を持たないまま安易な使用を続けさせていた。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 点検後の補修を直ちに行うこと 設置したエレベーターについては、定期自主検査(年次、月例)および毎年の性能検査を行う必要があるが、その結果に基づいて確実な補修を行い、安全な構造、性能を保持しなければならない。(クレーン等規則第154.155,158,159条等) なお、簡易リフトの場合にも、定期自主検査(年次、月例)および作業開始前の点検を行い、必要な補修を行わなければならない。(クレーン等規則第208〜212条) |
2 | 新たな構造規格に適応したエレベーターとすること このエレベーターのように設置時期が古く、経過措置により構造が簡易リフトの適用を受けるようなものについては、できるだけ早い機会に労働安全衛生法に基づくエレベーターとしての構造規格を有するものに変更することが望ましい。 とくに、過去の点検結果による補修個所の数、頻度が著しいものについては、早急に対応を検討する必要がある。 |
3 | エレベーターに関する情報を関係業者に提供すること 搬入業者の作業者が操作することが多い工場に設置されているものについては、エレベーターの管理部門と生産部門の連携を密にしてその構造、性能の不具合、使用禁止等について関係業者に的確な情報の提供と指示を与えることが必要である。(クレーン等規則第149〜151条) |
4 | 作業用エレベーターの操作者に対する安全教育を徹底すること エレベーターの操作は、誰でも行えるため安易に取り扱わせていることが少なくない。作業用エレベーターについては、基本的な取り扱い要領のほか、安全装置の機能、過負荷の制限、故障した場合の措置等について、自社の作業者は勿論のこと関係業者の作業者にあらかじめ十分な安全教育を実施する。 |