トラクター・ショベルで倒木を撤去作業中、同ショベルが路肩から転落し運転者が下敷きとなり死亡
業種 | ゴルフ場 | |||||
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事業場規模 | 16〜29人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 整地・運搬・積込み用機械 | |||||
災害の種類(事故の型) | 墜落、転落 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 自然の危険 | |||||
発生要因(人) | 分類不能 | |||||
発生要因(管理) | 機械、装置等を不安全な速さで動かす |
No.100903
発生状況
この災害は、ゴルフ練習場の営業再開に向けて行われていた作業中に発生したものである。 災害発生当日、被災者を含む作業者4名は冬季間閉鎖していたゴルフ練習場のオープンに向けた準備のため、練習場敷地内の法面(のりめん)上に倒れていた松の倒木の撤去作業を行っていた。作業は、倒木をトラクター・ショベルにより法面(のりめん)上部まで引っ張り上げ、その後トラクター・ショベルにて小型ダンプカーに積載、運搬するものであった。 被災者は倒木をトラクター・ショベルにより法面(のりめん)上部の作業用道路に引っ張り上げた後、小型トラックへ倒木を積み込むとになっていた。しかし、小型トラックは坂道のためショベルカーのところまで移動することができなかった。そこで被災者は坂の下に停車してあった小型ダンプカーのところまでトラクター・ショベルを運転して行くことになり、低速度で作業用道路を下り始めた。緩やかなカーブに差し掛かったところでカーブを曲がり切れず、ガードのない路肩部分で脱輪・横転し、回転しながら練習場敷地まで落下した。これを見た他の作業者は落下地点に駆けつけ被災者の救助を試みたが、被災者はトラクター・ショベルの下敷きとなり即死状態であった。 なお、災害発生当時、事故現場の作業道路には一部雪が残っており、滑りやすい状態であった。また、トラクター・ショベルには4輪共にチェーンが巻かれていた。 |
原因
この災害の原因としては、次のことが考えられる。 | |
1 | 災害が発生した現場の作業道路には残雪があり、滑りやすい状態であったこと。また災害が発生した当日、道路は全般的に乾いた状態であったが、作業前に倒木搬送用の小型トラックが作業用道路の坂を登れなかったこと等を考えると、部分的に滑り易い状況であったことが予想される。 |
2 | 被災者は車両系建設機械運転技能講習修了証を所持しており、トラクター・ショベル等による集材作業安全教育も修了していた。しかし災害発生事業場では安全衛生推進者は選任されておらず、労働者に対して安全衛生教育も行われていなかった。 |
3 | 使用されていたトラクター・ショベルは積雪期の除雪専用として8年前に購入された中古車両であった。購入以来、一度も定期自主検査が行われておらず、関連機器の動作状況についても確認がなされていなかった。 |
4 | 災害発生当日、被災者の様子に変わったところは見られなかったものの、被災者に対して定期健康診断は行われておらず、事業場としての健康管理も行われていなかった。 |
5 | 災害発生当日、作業にあたった作業者は4人いたが、この作業については作業手順書が作成されていなかったことに加えて、作業を指揮・監督するものも選任されていなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 年に一度ある作業なので安全対策に重点をおいた作業標準を作成し、作業者等関係者に対し周知徹底を図ること。また、自然環境に大きく左右される屋外作業の場合、作業中に予測していなかった事態が発生することがあるので、この点からの作業手順の見直しを行うこと。 |
2 | 現地において作業の指揮監督にあたる者の選任及び誘導者の配置を行うこと。 |
3 | トラクター・ショベル等を用いて作業を行うときは、あらかじめ作業場所の地形、地質の状態等に応じた適正な制限速度を定めること。 |
4 | 安全衛生推進者を選任し、事業場における安全衛生対策を推進するとともに、作業にあたる労働者に対して安全衛生教育を行うこと。 |
5 | トラクター・ショベル等車両系建設機械を使用する場合には、1年を超えない期間ごとに1回、当該車両系建設機械の定期自主検査を行い、各装置が有効な状態に保持されていることを確認した上で使用すること。また、定期自主検査の結果は3年間保存すること。 |
6 | 労働者に対して1年以内ごとに1回、定期に健康診断を行い、所見の認められる労働者には健康診断実施後3月以内に医師等から意見を聞いた上で作業を行わせること。 |