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労働災害事例

蒸煮釜の洗浄作業中、釜に投入したカ性ソーダが急激に溶解沸騰し、飛散した溶解液を浴びた作業者が熱傷

蒸煮釜の洗浄作業中、釜に投入したカ性ソーダが急激に溶解沸騰し、飛散した溶解液を浴びた作業者が熱傷
業種 その他の食料品製造業
事業場規模 100〜299人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 有害物
災害の種類(事故の型) 有害物等との接触
被害者数
死亡者数:− 休業者数:1人
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物) 作業手順の誤り
発生要因(人) 近道反応
発生要因(管理) 組合せては危険なものを混ぜる

No.100886

発生状況

 油揚げ製造工場において、蒸煮釜の洗浄作業中、カ性ソーダ水溶液が飛散し作業者が化学熱傷を負ったものである。
 蒸煮釜は水に浸してすりつぶした大豆を99℃で 4〜5分加熱し、豆乳を製造する球形の設備で、内径80cm、容積は150リットルで、蓋付きの投入口(円形 直径40cm)が設けられていた。
 蒸煮釜の清掃作業は、蒸煮釜の内部に80リットルの水が入っていることを確認した後に、殺菌洗浄剤としていた粒状のカ性ソーダ(純度99%)を袋(25s入り)から柄杓を使用して釜に4s投入している。
 被災者は2つの製造ラインに設けられた同型の蒸煮釜6基の清掃作業を担当しており、災害が発生した蒸煮釜には、被災者が最後にカ性ソーダの袋に残っていたもの全量(約4s)を柄杓を使用しないで、袋から直接投入口に投げ入れたところ、蒸煮釜の内部が突沸状態となり、カ性ソーダ水溶液が飛散し、被災者が上半身に40%の化学熱傷(II〜III度)を負ったものである。
  災害発生時の釜内の水量は80リットルよりは少なく、また、水温は確認されていないが釜の余熱もあり、カ性ソーダの溶解熱の発生が急激に進み突沸状態となったものと見られる。

原因

この災害の原因としては次のことが考えられる。
1 蒸煮釜内に残った湯を完全に排出しなかったこと
 蒸煮釜の湯の余熱があったため、カ性ソーダ(水酸化ナトリウム)の投入時の釜内部の水の温度が高くなり、溶解時の発熱が大きくなっていた。
2 蒸煮釜内部の水の量が少なかったこと
 釜の内部に残った水の量や温度を確認しなかったので、水量が定められていた量の80リットルに満たず、また、水温も高かったため、カ性ソーダ溶解液の濃度が濃くなっていた。
3 蒸煮釜への投入を袋から直接行ったこと
  一度に多量のカ性ソーダを投入したことにより、急激な溶解と発熱反応により内部の溶解液が沸騰状態となり、投入口から溶解液が飛散した。
4 カ性ソーダの投入時に定められていた柄杓を使用せず、また、作業位置も投入口の正面に位置したため、飛散した溶解液をかぶってしまったこと
  被災者は作業に必要な用具の使用を怠り、また、飛散した溶液がかからないような位置で作業をしなかった。
5 火傷防止のための保護面などの保護具等を使用していなかったこと
 保護具を使用していないため、飛散した溶液に上半身がさらされていた。
6 清掃作業に関する安全教育が実施されていなかったこと 
  蒸煮釜の清掃作業に伴う危険・有害な要因の把握、安全な作業方法等の教育と訓練が行われていなかった。

対策

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1  蒸煮釜へのカ性ソーダ(水酸化ナトリウム)の投入時の作業方法について改善すること
(1)  釜内部への適正な注水量を確認する。
(2)  釜内部の温度上昇を防止するため、水温の測定等により温度管理を徹底する。
(3)  カ性ソーダの投入量と投入に使用する作業用具や作業方法を改善する。
2  安全な作業方法を再検討した上で、安全な作業マニュアルを作成し教育を行い徹底を図ること
(1)  清掃作業に必要な薬剤の有害性・危険性
(2)  安全な作業方法の徹底
(3)  保護眼鏡、手袋、保護衣の着用の徹底
(4)  作業前の安全確認と単独作業の排除
3  災害発生時の救急措置等の徹底を図ること
 有害物との接触・誤飲、吸入等について救急措置の徹底を図るとともに救急薬品・資材等を作業場の必要個所に配置する。
4  異常反応等が発生したときの対策の樹立を図り、作業者に徹底すること
  MSDS等により化学物質の性状を把握して、異常な反応が出現した場合の作業方法等の教育と訓練を実施する。
5  工場全体の危険有害な作業、工程等を見直し、安全管理の水準の向上につとめること
 安全点検の実施とその結果に基づく改善を図るとともに、安全衛生委員会での検討を通じて作業者の安全意識の向上を図る。