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労働災害事例

板バネ製造工程で焼き入れされた板バネの検査作業中、作業者が熱中症にかかる

板バネ製造工程で焼き入れされた板バネの検査作業中、作業者が熱中症にかかる
業種 その他の金属製品製造業
事業場規模 30〜99人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 高温・低温環境
災害の種類(事故の型) 高温・低温の物との接触
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:−
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.100876

発生状況

 この災害は、板バネ製造工程で焼き入れされた板バネを検査する作業中に発生したものである。
 板バネ製造工程は、加工された材料を加熱し、プレスで成形し、再度加熱炉で880℃に加熱した後、油槽に浸けて焼き入れを行う。その後、焼き戻しを行い、検査工程を経て研磨、塗装を行って製品とするものである。
 被災者は、焼き入れされた板バネの形状を検査し、不良品を取り除き、合格品を焼き戻し炉に並べて入れる作業を担当していた。
 災害が発生した日、被災者は、午前8時30分から通常の検査の作業を始め、1時間ごとに10分程度の休憩を取りながら作業を行っていた。12時に昼の休憩に入り、食事をとりながら同僚に「足がだるい」と話していたが、午後1時に、通常の作業に就いた。午後2時に10分の休憩をとった後、30分ほど経過したとき、被災者が作業位置で倒れているのを同僚が見て、直ちに救急車により病院に搬送し治療を受けたが、3時間後に熱中症により死亡した。
 災害が発生した日は、最高気温が35℃に達する猛暑であり、被災者の作業位置では40度を超える室温であった。

原因

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1  気温が最高35度に達する真夏日であり、加熱炉付近で作業が行われており、作業位置の室温が40度を超える高温環境下での作業であったこと。
2  作業位置に直径15cmの温度が25℃の空気を吹き出すスポットクーラーが設けられていたが室温を緩和するほど有効に機能していなかったこと。
3  1時間ごとに休憩がとられていたが、冷房設備が設けられた休憩場所が確保されていなかったこと。
4  加熱炉から吹き出す熱風を防ぐ覆いが不十分であったため、作業位置に熱風が拡散していたこと。
5  作業中に、容易に水分および塩分を補給することのできる措置が講じられていなかったこと。
6  事業者はもとより作業員全員が、熱中症の危険や予防に関する知識が不足していたため、体調不良が自覚されたまま作業に就いていたこと。
7  災害が発生した時期、連日連夜、30度を超える真夏日と25度を超える熱帯夜が続き、被災者は睡眠不足と疲労の蓄積など身体的な不調があったものと考えられること。

対策

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1  作業場所ごとに設けるスポットクーラーは、直径を大きくし、風量を増すとともに、吹き出す空気の温度を24℃程度に下げ、吹き出し口はラッパ状にするなど吹き出す空気が拡散するようにすること。
2  作業場所には、作業中に容易に水分および塩分を補給することのできる物品を備え付けること。
3  作業場所と隔離された場所に、休憩時間に利用できる冷房装置が備え付けられた休憩設備を設けること。
4  作業場所に環境温度を評価する指標(WBGT)を把握するための環境温度計を設置し、作業中の環境温度の変化に対応した作業管理を行うこと。
5  熱中症に関する労働衛生教育を行うこと。また、熱中症にかかりやすい要因としての、二日酔い、睡眠不足、疲労の蓄積など夏バテしない体力づくりに関する健康教育を実施すること。
6  作業中に、身体の異常を自覚し、または他の作業員の異常を目撃したときは、すぐに職長へ通報するように全作業員に周知すること。