給湯器製造工場において、給湯タンクの漏れ検査作業中の作業者が熱中症にかかる
業種 | その他の金属製品製造業 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 高温・低温環境 | |||||
災害の種類(事故の型) | 高温・低温の物との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100873
発生状況
この災害は、給湯器製造工場において、給湯タンクの漏れを検査する作業中に、熱中症にかかったものである。
この工場は、敷地内に工場建屋がA、B、Cの3棟と食堂棟が設けられている。災害はC棟内で発生した。このC棟は、給湯器製造ラインが2ライン設けられており、南北方向70m、東西方向10mであり、切妻屋根で棟高が5m、壁面および屋根はスレート葺きの構造で、出入り口が東側に1ヶ所、西側に2ヶ所設けられていた。また、東面、西面に引戸式のガラス窓が設けられており、扇風機が3基置かれていた。 被災者が担当していた給湯タンクの漏れ検査の作業は、Bライン上に流れてきた給湯タンクをホイストでつり上げ、水槽上に運搬し、給湯タンク内にエアーを注入し、水槽内に浸けてエアー漏れの有無を確認するものであった。 災害が発生した日、被災者は、通常どおり、C棟内のBラインにおいて給湯器用のタンクの漏れ検査を行う作業を行っていた。そして、終業間際の午後5時近くになって、水槽の脇で意識朦朧になっている被災者に同僚が気付き、直ちに救急車で病院に搬送し、入院治療を受けていたが、2週間後に熱中症による多臓器不全で死亡した。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 気温が最高35度に達する真夏日であったことから、工場内の室温が相当高くなっていたものと推定できること。 |
2 | 工場内の室温を緩和するための冷風の供給、全体換気などの設備が設けられていなかったこと。 |
3 | 工場内には給水器が置かれていたものの、作業場所から離れていたため、作業中に十分な水分の補給が行われなかったものと考えられること。 |
4 | 高温下での激しい発汗があったものと考えられるが、塩分を補給する措置が講じられていなかったこと。 |
5 | 事業者はもとより作業員全員が、熱中症の危険や予防に関する知識が不足していたこと。 |
6 | 災害が発生した時期、連日連夜、30度を超える真夏日と25度を超える熱帯夜が続き、被災者は睡眠不足と疲労の蓄積など身体的な不調があったものと考えられること。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 工場内に全体換気設備を設けること、また、作業場所ごとに扇風機を置くなど適度な気流の流れを確保すること。なお、冷房設備などにより作業場所に冷風の供給が可能な設備をあわせ設けることが望ましいこと。 |
2 | 作業場所には、作業中に容易に水分および塩分を補給することのできる物品を備え付けること。 |
3 | 気温条件、作業内容等を考慮して、休止時間や休憩時間の確保に努めること。 |
4 | 作業場所に環境温度を評価する指標(WBGT)を把握するための環境温度計を設置し、作業中の環境温度の変化に対応した作業管理を行うこと。 |
5 | 熱中症に関する労働衛生教育を行うこと。また、熱中症にかかりやすい要因としての、二日酔い、睡眠不足、疲労の蓄積など夏バテしない体力づくりに関する健康教育を実施すること。 |
6 | 作業中に、身体の異常を自覚し、または他の作業員の異常を目撃したときは、すぐに職長へ通報するように全作業員に周知すること。 |