職場のあんぜんサイト

  1. ホーム
  2. 労働災害事例
  3. 労働災害事例(検索結果詳細)

労働災害事例

山林の下刈り作業中に熱中症となる

山林の下刈り作業中に熱中症となる
業種 林業
事業場規模 16〜29人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 高温・低温環境
災害の種類(事故の型) 高温・低温の物との接触
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:0人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.100869

発生状況

 この災害は、山林の下刈り作業中に発生したものである。
 被災者は、事務員3名、現場作業員が15名の森林組合に所属していて、造林等の作業に従事している。
 災害発生当日、被災者は、同僚と2人で森林組合が工期2か月で受注した県有林の下刈り作業を行うため午前5時頃自宅を出て作業現場に着き、少し遅れて到着した同僚と前日に引き続いて被災者が山の上の方を同僚が下の方で、刈払機を使用して下刈り作業を開始した。
 午前10時30分頃、午前の休憩時間になっても被災者が山の麓の休憩場所に下りてこないので、同僚が被災者の作業を行っている場所へ行ってみると、被災者は刈払機を持ったまま仰向けに倒れていた。
 そこで、同僚は、直ぐに車で10分ほどのところにある民家まで行って電話を借りて消防署へ連絡し、その後、ヘリコプターで救急隊員が到着して被災者は病院へ移送されたが、まもなく心停止のため死亡した。
 なお、被災者は、1リットルと0.5リットルのペットボトルに塩を入れたお茶を入れて現場に持参していたが、同僚が倒れているのを発見したときには1リットルのボトルの方は空の状態であった。

原因

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 炎天下の作業で熱中症に罹ったこと
 当日の平地での天気は、温度が28.3〜29.8℃、湿度が51〜55%で猛烈な暑さであったとはいえないが、炎天下の作業で、頭部出血、頚椎等の骨折、腹部出血などはなく、カリウム9.8、GOT216、GPT288、総たんぱく質9.8、CPK378と極度の脱水状態であったことから熱中症で死亡したものと考えられる。
2 炎天下の作業について教育等を行っていなかったこと
 真夏期の山林の下刈り作業は熱中症のおそれが高かったが、熱中症の危険、その予防対策等について被災者らは十分な知識がなく、経験的にペットボトルに塩分を含ませたお茶を少し用意した程度で作業を継続していた。
 また、作業時間、休憩時間、緊急時の連絡方法等についての作業管理、健康管理に関する教育、マニュアルの作成も行われていなかった。
 なお、健康診断については、7年前の雇い入れ前に、地方公共団体が実施した健康診断を受診したが、その後は定期健康診断を実施しておらず、被災者らの健康状態について森林組合は把握していなかった。

対策

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 熱中症に関する教育を実施すること
 屋外で直射日光を浴びながら作業を行っているときに、体温調節が乱されて熱痙攣、発汗停止、中枢神経の障害等を受ける熱中症について、関係作業者にその危険と予防方法についてあらかじめ十分な教育を実施する。
 特に、頻繁に涼しい場所で休憩をとること等による連続作業時間の調節、十分な水分や塩分を補給するためのクーラーボックス等の準備等について、関係作業者に徹底する。
2 炎天下の屋外作業における安全衛生管理を徹底すること
 山林での下刈り作業等は、事務所等からは離れた場所で行われるのが一般的であるが、緊急事態が発生した場合の無線等による連絡方法、毎日の作業開始前に健康状態を確認して連絡する等の作業・健康管理要領を定めて徹底するとともに、森林組合と作業者間の連絡を密に行う。
 また、涼しい休憩の場所の確保・設定等についてもあらかじめ検討し、必要な機材等も用意する。
3 健康診断等の健康管理を行うこと
 作業者については、毎年定期に健康診断を行い、健康状態の把握を行うとともに、必要な事後措置を徹底する。
 また、その日の健康状態が優れない場合には無理をして作業を行うことのないよう徹底する。